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2021年9月12日(日)

日本アレルギー学会によるコロナワクチン接種に関する声明

2021年9月12日(日曜日)

この度、日本アレルギー学会は、アレルギー疾患を有する一般の方を対象とした、新型コロナワクチンの接種に関する声明文を発表しました。

声明によると、1)過去に新型コロナワクチン(mRNAワクチン)に対してアナフィラキシーなど重いアレルギー反応を起こした方、2)同ワクチンに含まれるポリエチレングリコール(PEG)に対して重いアレルギー反応を起こしたことがある方、3)PEGに似た構造を持つポリソルベートに対して重いアレルギー反応を起こしたことがある方、に対しては接種を慎重に判断すべきと考えるものの、気管支喘息・食物アレルギー・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患に罹患している患者さんであっても、“接種するワクチン成分以外のものに対するアレルギーを有している方も接種は可能”との見解を示しています。

最終的に、声明文では“全般的にみて、ワクチン接種によって得られる感染予防効果と、起こりうる有害事象の危険性とを比較すると、接種で得られる効果の方がはるかに大きいと考える”ため、「日本アレルギー学会として、ワクチン接種を推奨します」と結んでいます。

従って、当院でも患者さん方から、“私はアレルギー疾患があるのですが、ワクチンを打っても構わないのでしょうか?”とよく尋ねられるのですが、ポリエチレングリコールまたはポリソルベートに対するアレルギーの既往がある方以外は大丈夫と言えると思います。

2021年8月5日(木)

モデルナアームについて

2021年8月5日(木曜日)

モデルナアームとは、モデルナワクチン接種後8〜10日程度経過してから、接種部位から末梢側にかけて手拳大の発赤〜腫脹をきたす病態を呼びます。80%以上が女性に発症し、20代から40代の比較的若年世代に生じやすいことを特徴とします。今ではすっかり有名になってしまいましたが、当初は当院に受診された患者さんに対しても診断がつきませんでした。しかし、文献を調べると海外からは比較的早い時期から論文が発表されていることが判明しました。

発症機序に対しては明らかにされていませんが、IgGを介した遅延型アレルギー説などが論じられています。但し、ファイザー社製のワクチンとモデルナ製のワクチンとの構造学的な代表的な違いはmRNAを包む殻が異なるのですが、この部分が発症の誘因になっているのか否かに関しては未だ不明です。

皮疹に対しては、放置しておいても1週間程度で自然消退しますが、局所を冷やすことが有効とされています。また、ステロイド外用剤を塗布することは抗体産生の妨げになるのではないかと私自身も当初処方するべきかどうか悩んだのですが、現在ではステロイド軟膏の外用も問題ないと考えられています。

1回目の接種でモデルナアームを発症した人は2回目の接種後にも同様の皮疹をきたす可能性が高いのですが、出現時期は1回目よりも早く症状は軽微である場合が多いとされていますので、たとえ1回目の接種後にモデルナアームを発症したとしても2回目の接種を躊躇する必要はなさそうです。

2021年7月11日(日)

ポリエチレングリコール(PEG)アレルギーについて

2021年7月11日(日曜日)

本年3月の本ブログで、コロナワクチン接種後に生じるアナフィラキシー反応はほとんどの場合がポリエチレングリコール(以下PEG)アレルギーに起因すると考えられていると述べました。この度、サーモフィッシャーダイアグノスティック社からPEGアレルギーに関する詳細なニュースレターが届きましたので、ここに引用させて頂きます。

その文献に基づくと、PEGアレルギー症例において、発症前に化粧品、衛生用品、入浴剤などの使用によって軽い症状の発現を経験している症例が少なからず認められる事より、感作は日常での化粧品などによる経皮感作の可能性が指摘されています。PEGアレルギーの特徴として、PEGは様々な物質に含まれているため、多種類の構造的に関連のない薬剤や製品によってアナフィラキシーを起こす例が多いことが挙げられ、薬剤によって繰り返し原因不明のアナフィラキシーを起こす例ではPEGアレルギーを疑うべきと報告されています。但し、最も発症頻度が高い原因物質は大腸内視鏡検査時に投与される腸管洗浄剤ですが、腸管洗浄剤に使用されるPEGは分子量3000g/ml以上のものであり、腸管からの吸収率が低いにも関わらず重篤なアレルギー症状を起こす理由については不明との事です。

コロナワクチンとの関連については、最近Pitlickらがワクチンの初回投与時にアレルギー反応を生じた8例の患者さんに対してPEGおよびPEG含有薬剤のプリックテストを施行したところ全例陰性であり、2回目の接種が可能であったと報告しています。従って、真のアレルギー反応ではないのか?、その他の未知のアレルゲンが存在しているのか?、今後のさらなる検討が必要であると思われます。

2021年6月13日(日)

dupilumab無効のアトピー性皮膚炎症例に対する対応

2021年6月13日(日曜日)

2020年7月の本ブログで、アトピー性皮膚炎の新規注射治療薬であるdupilumab(デュピクセント)について紹介しました。以降、当院でも10名以上の患者様に本剤を使用し、多くの方で良好な結果を得ています。しかし、中にはdupilumab無効例も存在するようであり、ロンドンimperial college のTakuya Miyano先生達のグループは、この度Allergy誌にdupilumab無効症例に対する治療法について報告されています。その論文によると、無効例に対してはdupilumabに加えて、IL-22阻害薬であるfezakinumabを併用すると有効性が高まったとの事でした。

私が学生だった40年前には、免疫の主役はまだTリンパ球でしたが、その後免疫学の進歩に伴いリンパ球が産生するサイトカインレベルでの解析が行われるようになり、免疫学は日進月歩で複雑化しています。そして、アトピー性皮膚炎の発症機序の主役はdupilumabが阻害するIL-4、IL-13であると考えられていますが、実際にはそれ以外にも様々なサイトカインがアトピー性皮膚炎の発症に複雑に関与しています。

今回有効性が論じられたfezakinumabが阻害するIL-22はTh22細胞から分泌され、Th17細胞から分泌されるIL-17と共に表皮の肥厚を誘導すると考えられていますが、今回の論文のデータから判断する限り、アトピー性皮膚炎発症の有力なサイトカインとして深く関わっているのかも知れません。

このように、アトピー性皮膚炎の発症機序はサイトカインレベルでもまだまだ解らない事ばかりですが、今後さらに研究が進歩し、実際の臨床に反映されることを願ってやみません。

2021年5月10日(月)

コロナワクチンによる副反応などについて

2021年5月10日(月曜日)

日本でもようやくコロナワクチン接種がぼちぼち進みつつあり、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会から本邦でのコロナワクチンによる副反応やアナフィラキシーについての集計結果が報告されました。

ちなみに副反応とは、アナフィラキシーなどのアレルギー反応とは異なり、コロナワクチンの薬剤自体の作用により生じる症状を指します。報告によると、生じた副反応は悪寒が10.40%で最多であり、次いで関節痛:10.11%、悪心:3.72%、筋肉痛:3.31%、背部痛:2.15%、発熱:1.85%、下痢:1.64%の順でした。ちなみに、私の周りの接種済みの人達の経験によると、高齢者よりも若年者の方が副反応を生じやすく、1回目よりも2回目の接種時の方が強い反応が起こる傾向がある様です。

一方、アナフィラキシーに関しては、医療機関から350例の報告がありましたが、実際にアレルギーの機序に起因したと考えられた症例は79例だったそうです。これを人口100万人当たりに換算すると72件に該当するとのことであり、アメリカでの4.7件/100万回やイギリスでの17.7件/100万回と比較して高値を呈していると考えられました。しかし、72件/100万回というと1万人当たり0.72件の発症という事になり、そう考えるとアナフィラキシー発症の心配もさほどなさそうですね。

2021年4月18日(日)

コロナワクチンによるアナフィラキシー 高齢者の管理

2021年4月18日(日曜日)

今回も、先月に続きコロナワクチンによるアナフィラキシーのお話です。接種が進まない我が国ではまだまだデータが乏しいとの現状ですが、接種が進んでいる欧州の老年医学会のワーキンググループによる “COVID-19ワクチンに対する高齢者のアナフィラキシーの管理に関する見解” がこの度Allergy誌に発表されました。

その結果、ファイザー社ワクチンでのアナフィラキシー症例の年齢中央値は40歳であり、特にアナフィラキシーが高齢者で生じやすいとのデータは得られませんでした。ちなみに発症例の90%は女性であり、アナフィラキシーは女性に好発しやすい傾向が認められました。

症状としては、高齢者では意識喪失などの心血管症状が頻繁に生じており、一方アナフィラキシーで最も多く生じる症状は蕁麻疹、血管性浮腫などの皮膚症状なのですが、高齢者では若年成人例と比較して重症例でも皮膚症状を認めない症例の頻度が高かったそうです。さらに、チアノーゼ・湿疹・めまい症状の出現は、高齢者におけるショック症状を高度に予測していたとのことです。

結論として、高齢者でCOVID-19ワクチンに対するアナフィラキシーの発症リスクが高いとのデータは得られませんでしたが、特定の薬剤の内服と多剤の同時服用は危険因子であり、特にワクチン接種と近い時期に服用されたβ阻害薬とACE阻害薬の服用はアナフィラキシー発症の危険性と関連が認められました。従って、これらの薬剤を服用されている方は、ワクチン接種と近い時間帯には薬剤の内服を控えておく方が無難かも知れませんね。

 

2021年3月9日(火)

コロナワクチンによるアナフィラキシー

2021年3月9日(火曜日)

日本でもそろそろコロナワクチンの接種が開始され、それに伴い患者様方からは「私はコロナワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?」との質問を多く受けます。確かに、ワクチンの主成分である二本鎖RNAに対する特異的IgEが産生される可能性は全くは否定できませんが、基本的には生まれて初めて体内に入る薬剤に対するアレルギーが生じる事は考えられませんので、少なくとも初回接種時にはその様な機序でのアナフィラキシーは起こらないはずです。

むしろ可能性が高いのは、ファイザー社とモデルナ社のワクチン中には脂質二重膜の水溶性を保持する目的でポリエチレングリコール(PEG)が含まれているのですが、PEGに対して既に感作が成立している人において、同剤を原因としたアナフィラキシーが生じうると考えられています。PEGは慢性便秘の治療薬や大腸内視鏡検査前処置薬に主成分として含まれており、その他食品・化粧品・軟膏基剤などにも含まれていますので、これらの製品によるアレルギーの心当たりのある方達はコロナワクチンの接種に注意する必要があります。

既存のワクチンによるアナフィラキシー発症の危険性は100万回当たり1件であるのに対して、コロナワクチン接種によるアナフィラキシー発症の危険性は10万回当たり1件と、約10倍の発症頻度があると報告されてきました。さらに、本日のニュースによると、日本でのコロナワクチン接種によるアナフィラキシー発症例は現時点では7万件で8人と、海外からの発症頻度よりも高率であるとの嬉しくない報告がなされています。とは言うものの、アナフィラキシー発症の危険性は極めて稀ですので、PEGに対するアレルギーの自覚がある方以外は、さほど心配せずにコロナワクチンの接種を受けても大丈夫だろうと私個人的には考えています。

2021年2月11日(木)

魚アレルギーの新規アレルゲン myosin heavy chain

2021年2月11 日(木曜日)

今回もまた、昨年末に開催されました日本皮膚免疫アレルギー学会で学んだ知識について紹介します。

魚アレルギーは成人の食物アレルギーの第4位を占めており、卵や牛乳と比べて免疫寛容を生じにくく、一旦発症すると10年経っても約80%の人では症状が持続しているそうです。

これまでパルブアルブミンと魚コラーゲンとが魚の2大アレルゲンと考えられており、パルブアルブミンは欧米の魚アレルギー患者の95%で陽性であるものの日本人の魚アレルギー患者での陽性率は60〜70%程度との事です。一方、魚コラーゲンは日本人の魚アレルギー患者の約50%で陽性であり、またほとんどが本邦からの報告であるとの特徴を有しています。ちなみに、魚コラーゲンと哺乳類のコラーゲンとの間には交差反応性は存在していません。

ところが今回、高知大学皮膚科の山本真有子先生は魚アレルギーの新規アレルゲンとして、225〜230kDaの分子量を有したmyosin heavy chainを同定されました。但し、パルブアルブミンが熱安定性であるのに対して、myosin heavy chainは熱非安定性であるため、加熱した魚では抗原性は不活化する様です。ただ、myosin heavy chainも多くの種類の魚類で抗原性を有しているみたいですので、2020年5月に述べたアユ特有のアレルギーのアレルゲンには該当しないと思われます。

アレルギーのどの分野に関しても同じ事が言えますが、話がどんどん複雑化して状況についていくのが精一杯ですが、私自身も頑張ってお勉強していこうと考えた様な次第です。

 

2021年1月11日(月)

Pork-Cat Syndrome 再考

2021年1月11日(月曜日)

今回もまた、昨年末に行われた日本皮膚免疫アレルギー学会で発表された演題からの紹介です。

Pork-Cat Syndrome (豚肉ーネコ症候群) という疾患については以前にもお話ししたと思います、ネコの有する血清アルブミンであるFel d 2と豚肉の血清アルブミンであるSus sとの間に交差反応性が存在しているため、ネコに接触しているうちにFel d 2に感作されたタイプのネコアレルギーの患者さんでは、やがて交差反応によって豚肉を摂取した後にもアナフィラキシーショックなどのアレルギー反応を生じる事があり、そのような場合にこの病名が用いられています。

ところが、今回横浜市立大学皮膚科の澤田先生らはネコの飼育歴はないものの、犬・ハリネズミ・ハムスターを飼育しているうちにこれらの動物に対する感作が生じ、さらに豚肉・牛肉の摂取後に口腔内のアレルギー症状を発症した症例を報告されました。確かにアルブミンという抗原は各動物間で高い構造類似性があり広範な交差反応性を有しているため、Pdrk-Cat Syndromeにおいてネコ以外の動物のアルブミンが感作抗原となったとしても何の不思議もない訳です。

これまでは、特にネコのアルブミンにおける交差反応性が高いと考えられていましたので、私達も豚肉に対するアレルギーの患者さんが来院された際には、「ネコは飼っていませんか? これまでにネコに対してアレルギー反応をきたしたことはありませんか?」などと問診していましたが、これからはネコ以外にも犬やハムスター・モルモットなど様々な動物に対する飼育歴やアレルギー歴を尋ねていく必要があるようです。

2020年12月24日(木)

納豆アレルギーとクラゲアレルギー再考

2020年12月24日(木曜日)

12月22日〜23日は休診にして患者様方には大変ご迷惑をおかけしましたが、高知で開催された日本皮膚免疫アレルギー学会に参加して多くの事を学んで来ました。今回はそのうちで、クラゲアレルギーと納豆アレルギーに関する新しい話題を紹介したいと思います。

納豆アレルギーに関しては以前にも述べたかと思いますが、1)サーファーなどマリンスポーツをされる方に好発する、2)納豆摂取後半日程度経過してから発症する、という特徴があります。その理由として、納豆アレルギーの原因抗原はポリガンマグルタミン酸(PGA)という物質であると考えられていますが、クラゲの針にもPGAが含まれておりマリンスポーツを好む方がクラゲに刺される事でPGAの感作が成立し、また納豆摂取時には納豆のネバネバの中に存在しているPGAが溶解してアレルギーを発症しうる分子量まで小さくなるのに半日程度を要するという要因が考えられてきました。

しかし、今回藤田医科大学の佐藤先生たちは、1)マリンスポーツをしない人たちに、2)納豆摂取後直ちに発症する、納豆アレルギー症例も存在する事を報告され、その原因蛋白として約30kDaの分子量の新規抗原を特定されました。

また、大阪はびきの医療センターの白井先生たちはクラゲを食べた後に発症したアナフィラキシー症例を報告され、会場では果たして納豆アレルギーとクラゲアレルギーの原因抗原は同一か否かという事で議論が行われました。しかし、過去のクラゲアレルギーの報告例では納豆アレルギーは有さないとの報告やPGAのプリックテストは陰性であったとの報告が認められており、納豆アレルギーの患者さんでも恐らくクラゲの摂取は可能であろうとの意見が主体となりました。

このようにアレルギーの世界ではまだまだ謎が多いのですが、細かい事ではあるものの大切な事ですし、とても興味深く感じられました。

   

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