2022年7月7日(木曜日)
Lipid Transfer Protein(以下LTP)とはヨーロッパ特に地中海領域では最もメジャーな果物類に対するアレルゲンであり、モモ、ブドウ、リンゴ、サクランボなどの主要抗原であると考えられています。そして、複数の果物類のLTPに感作されて症状を発現する場合に対して、LTP Syndromeとの病名が用いられています。LTP Syndromeの発症に対しては、モモのPru p 3というLTPアレルゲンコンポーネントが感作抗原として作用するという考え方と、ヨモギLTPのArt v 3などの花粉類に対する感作が先行して生じ、交差反応によって果物類のLTPに対しても症状をきたすようになるとの考え方の両者が存在しており、未だに結論には至っていません。
反面、日本人におけるLTPアレルギーの発症は極めて稀であると認識されています。その理由としては、果物類のLTPは大部分が果皮に存在し果肉にはほとんど存在していないのですが、西洋諸国では皮を剥かずに果物類を食べるためLTPの感作が生じやすいのに対して、日本人では通常果物類の皮を剥いて果肉だけを食するため、LTPの感作は滅多に生じないとの食文化の違いに起因した理由が推測されています。しかし、今後本邦でも食生活の変化などに伴ってLTPによるアレルギーが増加する可能性もあるため、本症に対して留意しておく必要があると思われます。