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2008年4月

2008年4月23日(水)

食物アレルギー

 特に、消化管が未熟な乳幼児期には食物アレルギーを生じやすいと考えられています。この時期の食物アレルギーの原因として、卵・牛乳・小麦が3大アレルゲンとして挙げられています。臨床症状は、1)このような食物を食べた直後に蕁麻疹や嘔吐・下痢・喘息様の症状などをきたすアナフィラキシーショックを生じる場合と、2)アトピー性皮膚炎の乳幼児において、このような食物アレルギーがアトピーの増悪因子として関与している場合とに大別されます。特に卵・牛乳のアレルギーは、成長に伴って消化管が成熟する事により軽快してくるとされていますが、近年その他の様々なパターンの食物アレルギーが増加しつつあります。
 その代表例としては、特定の食物摂取後に運動負荷が加わった場合に限ってアナフィラキシー症状をきたす食物依存性運動誘発アナフィラキシーという疾患が挙げられますが、この疾患は特に10歳代の中学生〜高校生世代に好発するとの特徴があります。また、花粉症の患者さんが特に果物類を摂取した後に咽喉がイガイガしたり口唇が腫れてくるなどの症状をきたす、口腔内アレルギー症候群という疾患にも注目が集まっています。
 多くの医療機関では、食物アレルギーに対して血液検査で特異的IgEという項目を調べる事で診断を行なっていますが、本来は血液検査のみならず皮膚テストも併用の上、両者の結果から総合的に判断する事がより望ましいとされています。当院では、食物アレルギーの検索に関して、血液検査のみならずプリックテストなどの皮膚テストも積極的に施行いたします。

蕁麻疹(じんましん)

 蕁麻疹とは、通常の湿疹病変とは事なり、個々の皮疹は数時間の経過であとかたを残さずに消褪するものの、あちこちと場所を移動しながら皮疹の出没を繰り返すとの経過の疾患です。ある日突然に発症する場合が多いため、患者さんは“食べたものに対してアレルギーを起こしたのではないか?”“内臓が悪いのではないか?”などと心配して受診される場合が多いですが、現実的には食物アレルギーや内臓の異常に伴って発症する蕁麻疹の頻度は稀です。
 蕁麻疹は多くの場合、発症後1週間程度で治癒に至りますが、一部では長期化する症例があり、4週間以上症状が持続すると慢性蕁麻疹と呼ばれます。慢性蕁麻疹では数年間も症状が続く場合もあり、このようなケースでは投薬のみならず積極的な原因検索を行なう事が望まれます。ただ、蕁麻疹を起こしうる原因も、1)感染症、2)自己免疫異常、3)不耐症、4)アレルギー、など多岐に及び、原因検索の施行が困難な場合も少なくありません。
 先に述べたように、アレルギー性蕁麻疹の頻度は高くはありませんが、時には食物アレルギーの機序によって発症する蕁麻疹症例も存在しています。代表的な例として、“サバなどの背の青い魚類を食べると蕁麻疹が起こりやすい”と古くから言い伝えられてきましたが、現在ではこのようなケースの多くは、魚類の腹腔に存在しているアニサキスによるアレルギーである事が解明されつつあります。
 当院では、特に難治性の蕁麻疹症例に対しては原因検索を含めて細かく対応していきたいと考えております。

アトピー性皮膚炎

 近年特に、アトピー性皮膚炎が混乱をきたしている原因として、個々の医者によって“アトピー性皮膚炎”という病名に対して抱いている疾患概念が異なっているという点が問題であるように思われます。「アトピー性皮膚炎=アレルギー疾患」と考えて、血液検査を施行した上で、IgEというアレルギーの抗体価が上昇している場合のみに限ってアトピー性皮膚炎と診断する医者から、いわゆる小児の乾燥肌に基づく湿疹をすべてアトピー性皮膚炎と見なす医者までまちまちであるため、患者さんや御家族にとっては受診する医療機関によって話の内容が異なり、困惑してしまうとの事態が少なくありません。
 現在、日本皮膚科学会によって定められているアトピー性皮膚炎の定義では、1)痒み、2)特徴的皮疹と分布、3)慢性・反復性の経過の3項目を主要な診断基準としており、「患者の多くはアトピー素因を持つ」と加えられているものの、アレルギーの潜在はアトピー性皮膚炎発症にとって、必ずしも必須の条件ではありません。アレルギー的因子以外に、ストレス・偏食・発汗・不規則な生活・病巣感染などの非アレルギー的な因子もまたアトピー性皮膚炎の増悪に関与しており、かくなるアレルギー的な因子と非アレルギー的な因子が複雑に絡み合って、アトピー性皮膚炎という病態を形成していると考えられています。従って、1人の患者さんにおいても複数の因子が発症に関与していますし、個々の患者さん毎で発症のための主要因子が異なっているという点が、アトピー性皮膚炎の診断と治療をより困難にしているものと推測されます。
 当院ではこのような考え方に基づいて、アレルギー的な因子と非アレルギー的な因子との両者を見据えながら、治療を行なってまいります。

   

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