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2021年6月

2021年6月13日(日)

dupilumab無効のアトピー性皮膚炎症例に対する対応

2021年6月13日(日曜日)

2020年7月の本ブログで、アトピー性皮膚炎の新規注射治療薬であるdupilumab(デュピクセント)について紹介しました。以降、当院でも10名以上の患者様に本剤を使用し、多くの方で良好な結果を得ています。しかし、中にはdupilumab無効例も存在するようであり、ロンドンimperial college のTakuya Miyano先生達のグループは、この度Allergy誌にdupilumab無効症例に対する治療法について報告されています。その論文によると、無効例に対してはdupilumabに加えて、IL-22阻害薬であるfezakinumabを併用すると有効性が高まったとの事でした。

私が学生だった40年前には、免疫の主役はまだTリンパ球でしたが、その後免疫学の進歩に伴いリンパ球が産生するサイトカインレベルでの解析が行われるようになり、免疫学は日進月歩で複雑化しています。そして、アトピー性皮膚炎の発症機序の主役はdupilumabが阻害するIL-4、IL-13であると考えられていますが、実際にはそれ以外にも様々なサイトカインがアトピー性皮膚炎の発症に複雑に関与しています。

今回有効性が論じられたfezakinumabが阻害するIL-22はTh22細胞から分泌され、Th17細胞から分泌されるIL-17と共に表皮の肥厚を誘導すると考えられていますが、今回の論文のデータから判断する限り、アトピー性皮膚炎発症の有力なサイトカインとして深く関わっているのかも知れません。

このように、アトピー性皮膚炎の発症機序はサイトカインレベルでもまだまだ解らない事ばかりですが、今後さらに研究が進歩し、実際の臨床に反映されることを願ってやみません。

   

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