2018年12月2日(日曜日)
糖尿病治療薬であるDPP-4阻害剤による薬疹で、水疱性類天疱瘡というタイプの水疱症が生じる場合があるという話は2017年7月に当コラムでお話しました。
昨日は兵庫県皮膚科医会学術集談会が開催され、診療終了後に神戸へと赴いて参加してきました。
元:大分大学皮膚科教授の藤原作平先生による「自己免疫性水疱症ー症例から学ぶー」とのタイトルの大変興味深いご講演を拝聴しましたが、今回は藤原先生のお話の中からいくつか紹介する事にします。
まず、藤原先生は上に述べたDPP-4阻害剤による水疱性類天疱瘡について、DPP-4阻害剤の種類毎の発症の危険性のオッズを紹介して下さいました。
そのデータによると、エクア:105、テネリア:59、マリセブ:44、トラゼンタ:29、オングリザ:16、ジャヌビア:13、ネシーナ:8との事であり、薬剤によって発症頻度にかなり差がある事が判明しました。
また、糖尿病自体と水疱性類天疱瘡の発症にも因果関係があり、93人の水疱性類天疱瘡の患者さんを検討した愛媛大学のデータによると、その内訳は、1)発症時に糖尿病がなかった人:56名、2)発症時に糖尿病に罹患していたがDPP-4阻害剤は服用していなかった人:26名、3)発症時に糖尿病に罹患しておりDPP-4阻害剤を服用していた人:11名 との結果であり、DPP-4阻害剤との因果関係よりもむしろ糖尿病罹患の因果関係の方が強く疑われたとの事でした。
このように、薬剤によって誘発される皮膚疾患に関しても様々なバックグラウンドが存在しており、今後さらに色々な研究や症例の集積が必要である事を痛感しました。