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2025年6月16日(月)

魚アレルギーのアウトグローは起こり得るのか?

2025年6月16日(日)

今回および次回は、去る5月29日〜6月1日に開催された日本皮膚科学会総会でのご発表のうちから、興味深いと思われた症例について紹介させて頂くことにします。

まず、藤田医科大学ばんたね病院総合アレルギー科の野村先生たちは「パンカシウスによる成人魚アレルギーの1例」という演題を報告しておられました。パンカシウスとはナマズ目の魚類であり、この御発表はパンカシウスによる即時型アレルギーの本邦第一例の報告という点でも珍しかったのですが、さらに特記すべきことは発症の約2年後には患者さんはマグロ、サバ、ブリなどの摂取が可能になったという点でした。

本ブログでもこれまで魚アレルギーに関しては複数回述べてきましたが、魚アレルギーの主要アレルゲンはパルブアルブミンかコラーゲンのいずれかであり、共に程度の差はあれ全ての魚類に存在している蛋白質であるため、魚アレルギーとの診断が下された際には通常患者さんは医師から全ての魚類の摂取を中止する様に指示されます。但し、本症例の患者さんはどうしても魚を食べたくなり、且つパルブアルブミンやコラーゲンなどの一般的な交差抗原に対する強い感作が認められなかったため、ELISA法で各魚種特異的IgEを確認し皮膚プリックテストを施行した結果、マグロ、ブリ、サバの摂取は可能であろうと判断され、実際通常量まで摂取できる様になったとの事でした。

この様な症例の存在は、一旦魚アレルギーと診断されたら終生魚類の摂取は避ける必要があると考えられてきたこれまでの慣例を打破するものであり、魚類アレルギーの患者さんにとっては大いなる朗報と言えると思います。

   

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