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2025年10月7日(火)

食物アレルギーにおける経皮感作のメカニズムについて

2025年10月7日(火曜日)

食物アレルギーの発症に関しては、2008年に英国のLackによって、食物自体を摂取することはむしろ免疫寛容を誘導してアレルギーを生じにくくするのに対して、経皮的に食物アレルゲンに曝露されることによって食物アレルギーが発症しやすくなるとの「二重抗原曝露仮説」が提唱され広く知れ渡ることとなりましたが、そのメカニズムの詳細に関しては不明でした。

しかし、この度東京大学農学生命科学研究科の村田幸久准教授らのグループは、皮膚科において産生されるプロスタグランデンD2(PSD2)が免疫細胞であるCRTH2受容体を刺激して、IgEの産生を促進するとの機序を明らかにされました。今回の研究では、食物アレルギーモデルマウスに対して皮膚に卵白アルブミン(OVA)を塗布したところ、皮膚局所でPSD2が増加し同時にIgE抗体の産生も増加することが確認されたそうです。逆に、PSD2の受容体であるCRTH2を欠損させたマウスではIgE抗体の産生とアレルギー症状の発現が有意に低下し、さらにCRTH2の阻害薬を皮膚に塗布することによって同様にIgE抗体の産生とアレルギー症状の出現を抑制できたことにより、将来的に治療薬剤の開発も期待しうる結果となりました。

今後、薬剤が開発されることで皮膚バリア機能の弱い乳幼児やアトピー性皮膚炎患者における食物アレルギーの発症の予防が可能になれば、喜ばしい事であると思われます。

   

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