2020年2月19日(水曜日)
モモアレルギーに関しては、数年前まではシラカンバのBet v 1(PR-10蛋白)やBet v 2(profilin)抗原とバラ科の果物類との交差反応によって口腔内アレルギー症状を発現する、Oral Allergy Syndrome(口腔内アレルギー症候群)の機序による発症が主体と考えられていました。
しかし、ここ数年はGibberellin-regulated protein(GRP)という抗原が注目されるようになり、モモの中にもpeamaclein(Pru p 7)との名称のGRP抗原が存在していることが同定されました。
この抗原は、当初はモモ自体の感作により発症すると考えられてきました(本コラム2018年4月参照)が、近年ではヒノキ中に存在しているBP-14との名称のGRPアレルゲンとの交差反応によって生じるクラス2アレルギーである可能性が示唆されるようになってきました(本コラム2020年1月参照)。
さらに、少し前になりますが2019年12月に横浜で開催された日本皮膚免疫アレルギー学会で、藤田医科大学総合アレルギー科の大野先生達のグループは、モモ摂取後にアナフィラキシー症状をきたした6症例のうち3例ではGRPが陽性であったものの、GRPが陰性であった残りの3症例では20kDaの分子量を有した新規アレルゲンが同定された事を報告されました。
このようにモモアレルギーを例に挙げても様々なアレルゲンが存在しているという事になり、抗原の同定はますます複雑化していきそうです。興味は募るばかりで、食物アレルギーの世界からますます目が離せそうにありませんね。