2023年12月12日(火曜)
去る12月8日(金)〜10日(日)の期間、クリニックを休診にさせて頂き、舞浜で開催された日本免疫アレルギー学会学術大会に出席してきました。今回も大変興味深い症例発表を数多く拝聴しとても勉強になりましたが、今月はまずダチョウ卵黄由来の化粧品の外用により発症した鶏卵アレルギー症例について紹介させて頂きます。
これはBird-Egg 症候群の亜型と考えられますが、Bird-Egg 症候群については2019年2月の本ブログでも紹介しました。本症は1985年に最初の報告がなされ、セキセイインコ・カナリア・オウムなどを飼っている人がその羽毛に感作した場合に鶏卵アレルギーを続発し、鶏卵の摂取によってアナフィラキシー症状をきたすという疾患です。小児の鶏卵アレルギーでは主に卵白の摂取によって症状を発現しますが、Bird-Egg 症候群は成人に好発し、Gal d 5という鶏卵の卵黄アレルゲンを主要抗原として、むしろ卵黄の摂取によって症状をきたすことを特徴とします。今回、国立病院機構福岡病院アレルギー科の杉山晃子先生たちのグループはダチョウ卵黄由来の化粧品により感作が成立し、その後鶏卵の摂取によって症状をきたした2症例を報告されました。さらに、ダチョウの卵では特に卵白と卵黄との分離が困難であり、immunogloblinYとの名称の60 kDaの分子量の抗原がダチョウの卵によって阻害されたことより、この抗原も発症に関与している可能性について論じておられました。
従来のBird-Egg 症候群ではセキセイインコ・カナリア・オウムなどの羽根の吸入により感作が成立するのに対して、今回の症例ではダチョウ卵黄由来の化粧品の外用によって感作が成立しており、最近話題の経皮感作の重要性を示唆する症例として大変興味深く拝聴しました。