2020年4月8日(水曜日)
世の中コロナ禍で大混乱ですが、皆様方お元気でお過ごしでしょうか?
私は講演会や勉強会が全て中止になってしまったため新たな知識を得る機会がなくて困っていますが、診療自体も患者さんの数が減少しているため、暇にまかせて「薬疹情報」という本から固定薬疹を生じやすい薬剤に関するチェックを行ってみました。
固定薬疹とは、身体の特定の決まった部位に境界明瞭な紅斑や褐色斑を生じる疾患ですが、薬剤が原因であるということを見逃されて再発を繰り返す場合も少なくありません。
本コラムでも、2015年9月に去痰薬のムコダインで固定薬疹を生じやすいことを、また2017年5月には薬剤ではないのですが、トニックウオーターの摂取によって固定疹を生じる場合があることを報告してきました。
また、抗生剤のミノマイシンやポンタール・ブルフェンなどの鎮痛解熱薬で固定薬疹が生じやすいことは良く知られています。
その他、今回「薬疹情報」を集計した結果、アリルイソプロピルアセチル尿素やエテンザミドといった鎮痛解熱剤の成分によって固定薬疹が数多く発症していることが判りました。
また、頻用されている薬剤の中では、小児に対する鎮咳薬として用いられるアスベリンや抗ヒスタミン薬のピレチア(プロメタジンメチレンジサリチル酸塩)による報告も多く認められました。
但し、ピレチアは鎮静効果が強いため、我々皮膚科医が痒み止め目的で使用することはほとんどありません。
さらに、ニューキノロン系抗菌剤であるジェニナック(メシル酸ガレノキサシン水和物)でも固定薬疹の報告が数多くありました。
このように、どの薬剤が固定薬疹を生じやすいかを熟知しておく事は、固定薬疹疑いの皮疹を見た際に、患者さんが服用中の薬のうちでまずどの薬剤を中止してもらうかに関して的確な判断をなしうるため、大切な事だと考えられます。