2024年1月11日(木曜日)
今回も、昨年12月に開催された日本皮膚免疫アレルギー学会で学んだ知見を紹介することにします。
島根大学の千貫祐子先生は「蕁麻疹診療update」とのタイトルでご講演をなされましたが、その中でプロスタグランジンE1製剤であるミソプロストールを前投与しておくと、小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)において血中ω-5グリアジン濃度が低下するということを示されました。FDEIAでは食物と運動のみならず、酸性系消炎鎮痛剤(NSAIDs)の服用もまた症状の増強に関与している事が知られています。その機序の詳細に関しては不明ですが、一方NSAIDsの摂取によって発症するアスピリン蕁麻疹という疾患も存在していますが、この疾患の場合にはアラキドン酸カスケードにおいてシクロオキシゲナーゼ(COX)の過剰な阻害が生じることによってプロスタグランジン類の合成が抑制され、リポキシナーゼへのシフトが増強することによって発症に至ると考えられています。
今回、WDEIAにおいてもプロスタグランジンE1製剤の関わりが示されたという事は、FDEIAの発症におけるNSAIDsの関与にはアスピリン蕁麻疹と同様の機序が関係している可能性が示唆されたということになります。FDEIAの発症に実際にミソプロストールが抑制効果を示すのかに関しては今後のさらなる検討課題と考えられますが、千貫先生のご講演を拝聴しながら、FDEIAの発症機序を鑑みる上で大変興味深い問題点だなと感じました。