2010年9月19日(日曜日)
今月もまたまたサボってしまい、「香櫨館通信」用に書いた原稿の転載でお茶を濁す事とさせて頂きます。
10月からは当院の向かえに小児科の先生が御開院される事になり、「香櫨館」も少し賑やかになりそうです。
アレルギーよもやま話 第9回
蕁麻疹について
蕁麻疹は、我々皮膚科の外来ではきわめて診る機会の多い病気です。しかし、蕁麻疹という言葉が半ば一般的な用語になっているため、実際には蕁麻疹以外の皮疹の患者さんが、“じんましんが出てきました”と訴えて来院される場合も良くあります。
蕁麻疹とは、“個々の皮疹は通常は数時間、どんなに長くても24時間以内には跡かたを残さずに消退する”と定義されています。いわゆる通常の湿疹変化とは異なり、皮膚自体には何も異常は生じておらず、真皮にある血管が浮腫を起こした事により赤く腫れて見えるのですが、血管の浮腫をきたす化学伝達物質の効能は普通数時間で切れてしまうため、短時間で消退するという訳なのです。ところが、時間差で場所を変えながら新しい皮疹が出続ける場合が多いため、漠然とみていた場合には、皮疹の場所が移動している事に気づかないケースも良くあります。
蕁麻疹はアレルギーの病気というイメージが強いため、患者さん達は“食べ物やお薬のアレルギーですか?”と心配される場合が多いのですが、実際には世間で考えられているほどアレルギー性蕁麻疹の頻度は高くはなく、むしろ風邪などの感染症や疲労・体調不良などに伴って生じるケースの方がはるかに多いとされています。
先ほども述べましたように、一旦生じた皮疹は数時間も経てば自然に消えてしまうのですから、ステロイド剤などの塗り薬を塗布する事には余り意味はありません。蕁麻疹の治療の主役としては、むしろ抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤と呼ばれる飲み薬を積極的に服用する事によって、次に出ようとしている皮疹をシャットアウトする事が重要なのです。
また、体が温まると余計にかゆみが増してきますので、蕁麻疹が生じた際には、熱い風呂への入浴や飲酒・激しい運動などは避けておいた方が無難でしょう。