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2025年9月11日(木)

新規アレルゲン ピルビン酸キナーゼについて

2025年9月11日(木曜日)

ピルビン酸キナーゼとは、解糖系の最終段階に関与してホスホエノールピルビン酸からアデノシン二リン酸へのリン酸基の転移を触媒し、アデノシン三リン酸とピルビン酸とを生成している酵素です。本酵素の遺伝的な欠陥はピルビン酸キナーゼ欠損症と呼ばれる疾患の原因となり解糖系過程の遅滞を生じますし、またピルビン酸キナーゼは発癌にも関与していると考えられています。

さらに近年、ピルビン酸キナーゼはアレルゲンとしても作用すると考えられており、Lee C-H らはピルビン酸キナーゼが重要な新規エビアレルゲンであることを(Food Chem. 2018 Aug 30;258:359-365. doi:10.1016/j.foodchem.2018.03.088.)、またWoo C-C らはカニアレルギー患者においてもピルビン酸キナーゼがアレルゲンとして作用することを(Food Chem. 2019 Aug 15;289:413-418. doi:10.1016/j.foodchem.2019.03.074.)報告しています。但し、これらの論文は共に台湾からの報告であるため、Lee C-Hらはピルビン酸キナーゼによる感作には人種差が存在している可能性について論じています。その他、Valverde-Mongeらはswordfish(メカジキ)の(Pediatr Allergy Immunol.2018;29:563-565. doi:10.1111/pai.12916.)、Ruethersらは鮭とナマズの(Allergy.2021:76:1443-1453. doi:10.1111/all.14574.)新規アレルゲンとして、ピルビン酸キナーゼが作用しているとの報告を行っています。さらに、WHO/IUISにはパンガシウス(ナマズ系の魚)のアレルゲンコンポーネントとして、ピルビン酸キナーゼであるPan h 9が登録されています。

このように、現在は甲殻類または魚類のアレルゲンとしての報告がなされていますが、この度私たちはピルビン酸キナーゼが交差抗原として作用したと考えたネギおよびマスカットアレルギー症例を経験しました。従って、ピルビン酸キナーゼは今後重要なアレルゲンとして認識される可能性があり、注目する必要があると考えられます。

   

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