2022年8月17日(水曜日)
アトピー性皮膚炎患者さんにとって、汗は有害なものであるとの考え方が一般的にまかり通っています。その根拠としては、1)アトピー性皮膚炎の患者さんでは汗が出にくいという症状(発汗障害)を有している人が多いのですが、このために皮膚のバリア機能低下やこもり熱をきたして痒みを増強させる、2)発汗減少の程度が軽微でまずまず汗をかいている患者さんでは、汗と皮膚表面の常在真菌であるマラセチアとが一体化してアレルゲンとして作用し症状の悪化を招く、などの考え方が存在しています。
少し古い話になりますが、去る7月14日にアトピー性皮膚炎と汗アレルギーに関する日本の権威であられる長崎大学皮膚科の室田教授を西宮市皮膚科医会講演会にお招きして、ご講演を拝聴しました。その結果、室田先生の御見解では汗は決して悪者ではなく、汗の中のシステインプロテアーゼにはアレルゲンを失活する作用があり、また汗中の乳酸ナトリウムや尿素は天然保湿因子として皮膚の潤いの維持に貢献するとの作用も有しているとの事でした。
結局、アトピー性皮膚炎患者さんにおける汗の功罪に関しては未だに解明されていない部分も多々あるのですが、この様な見解を含めて、私個人的にはアトピー性皮膚炎の患者さん方に対して、汗は積極的にかく様にして、且つかいた汗は濡れタオルで拭いたりシャワーを頻繁に浴びたりして、こまめに拭き取る様に努めて下さいと説明しています。