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2026年2月5日(木)

IgEを除去する新規抗体薬

2026年2月5日(木曜日)

アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギー、気管支喘息などの即時型アレルギーの原因となるIgE抗体を除去する薬剤としては、これまでにオマリズマブ(ゾレア®)が存在していました。但し、オマリズマブは血中に単独で存在するIgE抗体を除去する事はできても、マスト細胞などの膜表面に結合したIgE抗体を引き剥がすことまでは出来ませんでした。

しかし、この度順天堂大学の安藤先生達のグループは、IgE抗体内でIgEと細胞との結合を安定化している“Cε2”という部位に注目し、ウサギからヒトIgE抗体のCε2部位に結合可能な抗体の遺伝子を取り出し、結合部位のFabをヒトIgE抗体を結合させたマスト細胞に投与したところ、細胞膜からIgE抗体を引き剥がすことによって、アレルゲンによる細胞活性化を抑制できることを実証されました。この結果、これまでは治療標的部位として余り注目されていなかったヒトIgEのCε2という部位を抑制することによって、アレルギー反応の発現を早期に阻害しうることが明らかになりました。

今後、薬剤として実際に使用可能となるまでにはまだまだ高いハードルが存在しているでしょうが、このような新しい機序の薬剤が提唱されることはとても楽しみですね。

2026年1月7日(水)

即時型アレルギー反応の新規検査法

2026年1月7日(水曜日)

即時型アレルギーの新規検査法として、EXiLE (IgE Crosslinking-inducved Luciferase Expression) 法という検査法に注目が集まっています。これは、IgE抗体の架橋に基づいたマスト細胞の活性化を評価しうる即時型アレルギーの検査法です。

現在でも、即時型アレルギーの検査法としては特異的IgEの測定が一般的ですが、特異的IgEの結果は感度や特異度に限界が存在しています。そこで、より精度の高い検査法としてBAT検査(好塩基球活性化試験)が開発されましたが、採血後直ちに測定を要するとの難点があります。EXiLE法はBAT検査と同等の精度を有しながら、保存血でも測定が可能であるため、より実用的で簡便な検査法として期待されています。

但し、現在のところ保険承認外の検査法であるため、ルーチーンに測定することは不可能ですが、保存血での測定が可能である生体反応に近い検査法であるため、今後保険収載された際には即時型アレルギー反応の検査法の精度の向上に貢献するものと予想され、是非実現されることを期待しています。

2025年12月10日(水)

オート麦含有石鹸による経皮感作で生じた小麦〜オート麦アレルギー

2025年12月10日(水曜日)

去る11月28日(金)〜29日(土)は休診とさせて頂き、新宿京王プラザホテルで開催された皮膚免疫アレルギー学会に出席してきました。同学会では多くの新知見や興味深い症例を拝聴しましたが、その中で今回は京都府立医科大学皮膚科の森戸千賀子先生が報告されたオート麦含有石鹸による経皮感作で生じた小麦〜オート麦アレルギー症例を紹介したいと思います。

森戸先生のご報告によると、2年前から全身の洗浄にオート麦含有石鹸を使用していた48歳女性が次第にオート麦や小麦含有食物の摂取後にアナフィラキシー症状をきたすようになり、最終的に石鹸中のオート麦による経皮感作で発症した小麦〜オート麦アレルギーと診断されたとの経緯でした。かつて、加水分解小麦含有石鹸使用後の経皮感作によって小麦アレルギー症例が多発した事が世間を大騒ぎさせましたが、意外な事にこのオート麦含有石鹸による同様の経過の報告は過去には認められていないそうです。この症例の報告を拝聴しながら私が感じた事は、1)あれほど加水分解小麦含有石鹸によるアレルギー症状の発症例が問題視されたのに、未だになおオート麦含有石鹸なるものが存在しているのか?という驚き、2)しかし、このオート麦含有石鹸によるアレルギー症例の報告は過去には認められていないという事からは、加水分解処理さえ行わなければ石鹸中の小麦やオート麦による感作能はそれほど強くはないのか?という疑問、でした。

このように、食物アレルギーの発症機序に関する疑問や興味は尽きる事がなさそうですね。

2025年11月3日(月)

昆虫食アレルギーについて

2025年11月3日(月曜日)

私自身無知で知らなかったのですが、ハチの幼虫・イナゴ・バッタ・コオロギなど昆虫を食べることは「昆虫食」と称され、日本においても地方の食文化として長く根付いているそうです。Wikipediaを検索すると、2008年のデータでハチの子およびイナゴの缶詰はそれぞれ1トン弱、カイコのサナギは300キロが加工製造されており、また文部科学省が定める「日本食品標準成分表2020年度版」ではイナゴの佃煮とハチの子の缶詰が肉類の中に記載されているとの事でした。さらに、近年にはタガメサイダーがちょっとしたヒット商品となったみたいです。

ところが、去る10月末に日本皮膚科学会西部支部総会が岡山で開催された際に、藤田医科大学ばんたね病院総合アレルギー科の矢上晶子教授にお目にかかった際に教えて頂いた知識なのですが、近年この昆虫食摂取後にしばしばアレルギー症状を発症する場合があるそうです。矢上教授のお話では、特にダニアレルギーまたはエビアレルギーがある方では、一部の昆虫食と交差反応を有して症状を発現する場合があるため、注意が必要との事でした。

まだまだ色々と知らないアレルギー反応が存在しているため、気をつけないといけないですね。

2025年10月7日(火)

食物アレルギーにおける経皮感作のメカニズムについて

2025年10月7日(火曜日)

食物アレルギーの発症に関しては、2008年に英国のLackによって、食物自体を摂取することはむしろ免疫寛容を誘導してアレルギーを生じにくくするのに対して、経皮的に食物アレルゲンに曝露されることによって食物アレルギーが発症しやすくなるとの「二重抗原曝露仮説」が提唱され広く知れ渡ることとなりましたが、そのメカニズムの詳細に関しては不明でした。

しかし、この度東京大学農学生命科学研究科の村田幸久准教授らのグループは、皮膚科において産生されるプロスタグランデンD2(PSD2)が免疫細胞であるCRTH2受容体を刺激して、IgEの産生を促進するとの機序を明らかにされました。今回の研究では、食物アレルギーモデルマウスに対して皮膚に卵白アルブミン(OVA)を塗布したところ、皮膚局所でPSD2が増加し同時にIgE抗体の産生も増加することが確認されたそうです。逆に、PSD2の受容体であるCRTH2を欠損させたマウスではIgE抗体の産生とアレルギー症状の発現が有意に低下し、さらにCRTH2の阻害薬を皮膚に塗布することによって同様にIgE抗体の産生とアレルギー症状の出現を抑制できたことにより、将来的に治療薬剤の開発も期待しうる結果となりました。

今後、薬剤が開発されることで皮膚バリア機能の弱い乳幼児やアトピー性皮膚炎患者における食物アレルギーの発症の予防が可能になれば、喜ばしい事であると思われます。

2025年9月11日(木)

新規アレルゲン ピルビン酸キナーゼについて

2025年9月11日(木曜日)

ピルビン酸キナーゼとは、解糖系の最終段階に関与してホスホエノールピルビン酸からアデノシン二リン酸へのリン酸基の転移を触媒し、アデノシン三リン酸とピルビン酸とを生成している酵素です。本酵素の遺伝的な欠陥はピルビン酸キナーゼ欠損症と呼ばれる疾患の原因となり解糖系過程の遅滞を生じますし、またピルビン酸キナーゼは発癌にも関与していると考えられています。

さらに近年、ピルビン酸キナーゼはアレルゲンとしても作用すると考えられており、Lee C-H らはピルビン酸キナーゼが重要な新規エビアレルゲンであることを(Food Chem. 2018 Aug 30;258:359-365. doi:10.1016/j.foodchem.2018.03.088.)、またWoo C-C らはカニアレルギー患者においてもピルビン酸キナーゼがアレルゲンとして作用することを(Food Chem. 2019 Aug 15;289:413-418. doi:10.1016/j.foodchem.2019.03.074.)報告しています。但し、これらの論文は共に台湾からの報告であるため、Lee C-Hらはピルビン酸キナーゼによる感作には人種差が存在している可能性について論じています。その他、Valverde-Mongeらはswordfish(メカジキ)の(Pediatr Allergy Immunol.2018;29:563-565. doi:10.1111/pai.12916.)、Ruethersらは鮭とナマズの(Allergy.2021:76:1443-1453. doi:10.1111/all.14574.)新規アレルゲンとして、ピルビン酸キナーゼが作用しているとの報告を行っています。さらに、WHO/IUISにはパンガシウス(ナマズ系の魚)のアレルゲンコンポーネントとして、ピルビン酸キナーゼであるPan h 9が登録されています。

このように、現在は甲殻類または魚類のアレルゲンとしての報告がなされていますが、この度私たちはピルビン酸キナーゼが交差抗原として作用したと考えたネギおよびマスカットアレルギー症例を経験しました。従って、ピルビン酸キナーゼは今後重要なアレルゲンとして認識される可能性があり、注目する必要があると考えられます。

2025年8月6日(水)

IL-13Rα2を阻害することは是か?非か?

2025年8月6日(水曜日)

IL-13の受容体にはIL-13Rα1とIL-13Rα2との2種類が存在していますが、このうちIL-13Rα2はシグナル伝達作用を有さないデコイ受容体であると考えられています。但し、IL-13Rα2は様々な癌細胞において過剰発現しており、癌の浸潤や転移にも関与していると考えられています。また、アトピー性皮膚炎の皮膚においてもIL-13Rα2の発現は増強しており、とりわけ掻破部位ではIL-13Rα2が上昇することが確認されています。但し、IL-13は自分のシグナルをself-limited(自己制限)するように作用していると考えられており、IL-13Rα2発現の上昇によってIL-13の作用自体は緩和されるとの見解が存在しています。しかし、IL-13Rα2の阻害がIL-13自体を減弱させるとの逆の見解も認められており、果たしてIL-13Rα2を阻害することはIL-13の作用を減弱させるために有効なのか?、悪化因子なのか?混沌としているような状況です。

近年様々なアトピー性皮膚炎に対する新規薬剤が発売されていますが、このうちでIL-13Rα2の阻害作用を有しているのは唯一トラロキヌマブ(商品名:アドトラーザ®)のみです。トラロキヌマブの有効性を確認するためにも、IL-13Rα2阻害の有効性の有無が明らかになることを期待しています。

 

2025年7月15日(火)

北海道留萌地域のホタテガイ養殖者における納豆アレルギー

2025年7月15日(火曜日)

今回も去る5月に開催された日本皮膚科学会総会で発表された興味深いお話の中から、北海道大学公衆衛生学教室の黒鳥先生が報告された“北海道留萌地域のホタテガイ養殖者における納豆アレルギー”について引用させて頂きます。

納豆アレルギーについてはこれまでにも述べてきましたが、クラゲに刺されてクラゲの体内に存在するPGA(ポリガンマグルタミン酸)に対する感作が成立して発症するとの機序より、マリンスポーツ愛好者に好発することが良く知られています。ところが、北海道留萌地域ではマリンスポーツをしないホタテガイ養殖者間で納豆アレルギーが頻発することがずっと謎とされてきました。しかし、黒鳥先生の解析の結果、北海道でも留萌より以北のホタテガイ養殖者は寒さのためゴム手袋を着用しているのに対して、留萌地域のホタテガイ養殖者は特に網の修繕作業を素手で行なっているため、PGAを含む海洋汚染物質にまみれた網を何度も素手で触って修繕することによりPGAの感作が生じることが判明しました(ちなみに、留萌地域でも漁師達は通常ゴム手袋を着用しているため、納豆アレルギーは発症していないとの事です)。今後、ホタテガイ養殖者に対しても手袋着用を徹底化していかれるそうです。

このように、アレルギーの発症には思いもよらない因子が関係している場合があるため、興味は尽きないですね。

2025年6月16日(月)

魚アレルギーのアウトグローは起こり得るのか?

2025年6月16日(日)

今回および次回は、去る5月29日〜6月1日に開催された日本皮膚科学会総会でのご発表のうちから、興味深いと思われた症例について紹介させて頂くことにします。

まず、藤田医科大学ばんたね病院総合アレルギー科の野村先生たちは「パンカシウスによる成人魚アレルギーの1例」という演題を報告しておられました。パンカシウスとはナマズ目の魚類であり、この御発表はパンカシウスによる即時型アレルギーの本邦第一例の報告という点でも珍しかったのですが、さらに特記すべきことは発症の約2年後には患者さんはマグロ、サバ、ブリなどの摂取が可能になったという点でした。

本ブログでもこれまで魚アレルギーに関しては複数回述べてきましたが、魚アレルギーの主要アレルゲンはパルブアルブミンかコラーゲンのいずれかであり、共に程度の差はあれ全ての魚類に存在している蛋白質であるため、魚アレルギーとの診断が下された際には通常患者さんは医師から全ての魚類の摂取を中止する様に指示されます。但し、本症例の患者さんはどうしても魚を食べたくなり、且つパルブアルブミンやコラーゲンなどの一般的な交差抗原に対する強い感作が認められなかったため、ELISA法で各魚種特異的IgEを確認し皮膚プリックテストを施行した結果、マグロ、ブリ、サバの摂取は可能であろうと判断され、実際通常量まで摂取できる様になったとの事でした。

この様な症例の存在は、一旦魚アレルギーと診断されたら終生魚類の摂取は避ける必要があると考えられてきたこれまでの慣例を打破するものであり、魚類アレルギーの患者さんにとっては大いなる朗報と言えると思います。

2025年5月25日(日)

最近の重症薬疹のトピックス

2025年5月25日(日曜日)

昨日は診療終了後に、神戸三宮で開催された兵庫県臨床アレルギー研究会に出席し、新潟大学皮膚科の阿部教授による「最近の重症薬疹のトピックス」とのタイトルのご講演を拝聴してきました。私も開業して以降は重症薬疹の症例と遭遇する機会は減りましたが、勤務医の頃には重症薬疹の治療に難渋するケースも少なからず経験しました。

重症薬疹の1つに、Stevens-Johnson SyndromeまたはTEN(Toxic Epidermal Necrolysis)という疾患があります。これらの疾患では表皮壊死をきたすことによって、最悪の場合には致命的に至る重篤な薬疹なのですが、昨日のご講演で阿部教授は、これらの疾患に対する治療薬として生物学的製剤の一種であるTNF-α阻害薬のエタネルセプト(商品名:エンブレル)が有効である可能性を御教示して下さいました。TNF-α阻害薬にはエタネルセプト以外にもアダリムマブやインフリキシマブなど多種類があるのですが、阿部教授は安全性の点からまず第一選択としてエタネルセプトを使用することを推奨しておられました。

このような新規治療法を用いることによって、Stevens-Johnson SyndromeやTEN(Toxic Epidermal Necrolysis)といった重症型薬疹の致死率が低下することを切に願っています。

   

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