2010年7月19日(月曜日)
今月も不精をして、「香櫨館通信」用に書いた原稿を転載しちゃいます。
いよいよ夏が近づき、虫さされの季節になってきました。虫に刺されて激しい痒みを生じたり、大きく赤く腫れたりして悩まされる方々も少なくないと思います。
しかし、この虫さされという現象もほとんどの場合はアレルギー反応である事を御存知でしょうか?よく“虫も喰わねえ奴だ”等と言ったりしますが、現実的には虫は人を選ぶことなく刺したり咬んだりしているのですが、人間の個体側の問題で、アレルギー的な機序によって刺された場所が大きく腫れる人から全く腫れない人まで様々なケースが存在しているのです。
アレルギー反応は、原因抗原に接触した直後〜30分以内に症状をきたす即時型反応と、1〜2日経過してから初めて症状が生じる遅延型反応とに大別される事は以前にもお話しましたが、虫さされの場合にもこの両方の反応が起こりうるのです。虫博士としても御高名な兵庫医科大学皮膚科准教授の夏秋 優先生の御研究によると、“初めて蚊に刺された時には無反応であるが、その後まず遅延型反応が出現し、次いで即時型反応が生じるようになる。さらに刺され続けると、まず遅延型反応は減弱し、さらには即時型反応までもが減弱してついには蚊に刺されても無反応となる。”との経過をたどるそうです。従って、個人的な資質もあるのですが、年齢という点が大きな要因であり、乳幼児期には遅延型反応によって蚊に刺された跡がいつまでも赤く腫れやすいのに対して、お年寄りではたとえ刺されても無反応となる可能性が高いという訳なのです。
さらに、蚊に刺された跡が潰瘍化したり巨大な水疱を呈したりして重篤な病態をきたす場合が稀にありますが、最近このような病態の原因として、その人の体内に潜んでいるEBウイルス感染が関係している事が知られるようになってきました。