2023年1月9日(月曜日)
昨年12月になりますが、名古屋で開催された日本皮膚免疫アレルギー学会総会に参加してきました。今月からは、その際に学んだ症例などについて述べさせて頂きます。
そもそも、食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、基本的には食物アレルギーでありながら原因となる食物の摂取のみでは症状は発現せず、その直後に運動負荷が加わった場合に限ってアレルギー症状をきたすという疾患です。但し、運動以外にも、原因食物摂取と同時に鎮痛剤を服用するなど、食物アレルギーの閾値を高める因子が共存すると症状は起こりうると考えられています。
今回、琉球大学の伊藤先生たちのグループは、小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーの既往がある20歳代女性が、妊娠36週時に小麦を摂取しただけでアナフィラキシー症状をきたした症例を報告すると共に、安静時での症状が誘発された原因として、「妊娠による子宮への血流増加によって消化管の血流不足が生じた結果、運動負荷や鎮痛剤内服時と同様に未消化蛋白が消化管から吸収されやすい状態に至った」との機序を推測されていました。
という事で、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの既往がある妊婦さんの場合には、妊娠中にはアレルギーの原因となる食物の摂取を、普段からより厳格に控えておく必要がありそうですね。