2025年8月6日(水曜日)
IL-13の受容体にはIL-13Rα1とIL-13Rα2との2種類が存在していますが、このうちIL-13Rα2はシグナル伝達作用を有さないデコイ受容体であると考えられています。但し、IL-13Rα2は様々な癌細胞において過剰発現しており、癌の浸潤や転移にも関与していると考えられています。また、アトピー性皮膚炎の皮膚においてもIL-13Rα2の発現は増強しており、とりわけ掻破部位ではIL-13Rα2が上昇することが確認されています。但し、IL-13は自分のシグナルをself-limited(自己制限)するように作用していると考えられており、IL-13Rα2発現の上昇によってIL-13の作用自体は緩和されるとの見解が存在しています。しかし、IL-13Rα2の阻害がIL-13自体を減弱させるとの逆の見解も認められており、果たしてIL-13Rα2を阻害することはIL-13の作用を減弱させるために有効なのか?、悪化因子なのか?混沌としているような状況です。
近年様々なアトピー性皮膚炎に対する新規薬剤が発売されていますが、このうちでIL-13Rα2の阻害作用を有しているのは唯一トラロキヌマブ(商品名:アドトラーザ®)のみです。トラロキヌマブの有効性を確認するためにも、IL-13Rα2阻害の有効性の有無が明らかになることを期待しています。