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2023年5月

2023年5月9日(火)

アブラガレイアレルギー

2023年5月9日(火曜)

今月もまたまた、私が編集企画を務めさせて頂きました「MB Derma   食物アレルギー診療〜開業医の立場での展開〜」で投稿をお願いした内容から引用させて頂きます。

大分県杵築市にある伊藤皮膚科の伊藤宏太郎先生はアブラガレイアレルギー症例を報告して下さいましたが、本症例ではアブラガレイ摂取後にアレルギー症状をきたし、アブラガレイのプリックテストも陽性だったのですが、大変興味深い事にその他の魚類は全て特に問題なく摂取可能であったとの経緯でした。

本ブログではこれまでにも、パルブアルブミンとコラーゲンとの2種類が魚類アレルギーにおける主要なアレルゲンであること、さらに2021年2月には魚アレルギーの新規アレルゲンとしてmyosin heavy chainという抗原が存在していること、2022年4月には重症の魚アレルギーではコラーゲン特異的IgE陽性例が多いこと、などを報告してきましたが、これらの抗原はいずれも複数の魚類に対して抗原性を有する蛋白であり、感作された患者さんではほぼ全ての魚類の摂取が不可能になります。

それに対して、伊東先生の症例はアブラガレイ単独に対するアレルギーであったという事を特徴とします。本論文では原因となるアレルゲンの同定までは成し得なかったとのことでしたが、恐らくこの症例の原因となるアレルゲンはパルブアルブミン、コラーゲン、myosin heavy chainのいずれとも異なる新規アレルゲンであるとの可能性が疑われます。という次第で、魚アレルギーの世界もまだまだ奥が深いですね。

2023年4月11日(火)

ヒマワリの種による即時型アレルギー

2023年4月11日(火曜日)

手前味噌になりますが、MB Dermaという皮膚科の雑誌の2023年3月号では、「食物アレルギー診療〜開業医の立場での展開〜」とのテーマで、私が編集企画を務めさせて頂きました。本企画は、開業医の先生方によってなされた珍しい食物アレルギーの報告例をまとめたものでしたが、その中には私自身も過去に経験のない食物抗原による報告もありましたので、そのような症例を紹介したいと思います。

まず今月は、愛媛県松山市のわたなべ皮ふ科形成外科院長の渡部裕子先生が報告された、ヒマワリの種による即時型アレルギーについて述べることにします。

ヒマワリの種による即時型アレルギーには、1)ヒマワリの種を食べることによって発症する経口感作、2)小鳥・ハムスターなどの小動物を飼育している人が、餌として与えていたヒマワリの種を手で触れることにより生じる経皮感作、または吸入することにより生じる経気道感作、3)同じキク科の植物であるヨモギ花粉との交差反応によって、花粉食物アレルギー症候群の機序で生じるアレルギー反応、など異なった複数の感作経路が報告されているそうです。私自身もこのようなアレルゲンについては知りませんでしたが、食生活の変化、ペットブーム、花粉症の増加などに伴ってヒマワリの種による即時型アレルギーは増加する可能性があり、ヒマワリの種は即時型アレルギーの原因として今後注目すべきアレルゲン食品のひとつであるとの事でしたので、皆様方もどうぞご留意下さい。

2023年3月6日(月)

セリ科スパイスアレルギーとマメ科スパイス(フェヌグリーク)アレルギーとの合併

2023年3月6日(月曜日)

2022年12月の本コラムにおいて、スパイスアレルギーというと通常はセリ科スパイスアレルギーと考えがちですが実際には必ずしもそうではなく、集計した7例のスパイスアレルギー中4例はセリ科スパイスアレルギーだったものの、残りのうちの2例はマメ科のフェヌグリークによる感作であったという内容の藤田医科大学佐藤先生によるご報告を紹介しました。

これに関連して、昨年12月に開催された日本皮膚免疫アレルギー学会では、昭和大学の三浦先生がカレーアレルギーの中にはクミン・コリアンダーなどのセリ科スパイスアレルギーとマメ科スパイスであるフェヌグリークアレルギーとを合併した症例が存在していることを報告されました。この両者のアレルギーが併発する機序に関しては定かではありませんが、過去に報告されたフェヌグリークアレルギー8症例のうち1症例ではクミンのアレルギーを合併していたとの事でしたので、個別感作ではなく交差反応によって発症したとの可能性も否定は出来ません。

という次第で、今後はマメ科のフェヌグリークによるスパイスアレルギーの発症に注目して留意しておく必要がありそうです。

2023年2月6日(月)

コチニールアレルギーの新たな発症機序

2023年2月6日(月曜日)

今回も、昨年12月に開催された日本皮膚免疫アレルギー学会での発表内容から紹介させて頂きます。

コチニール色素アレルギーに関しては、2014年12月の本コラムで述べさせて頂きました。コチニールとはカイガラムシ科エンジムシの乾燥虫体から得られる天然の赤色色素ですが、これまでコチニール色素に対するアレルギーはコチニール色素を含有した化粧品の使用によって感作が生じるため、日常的に化粧を行う成人女性に限局して発症すると考えられてきました。ところが、2020年に、甲南医療センター小児科の平瀬先生らは化粧歴のない8歳男児に生じたコチニールアレルギー症例を報告され、さらに今回の日本皮膚免疫アレルギー学会で藤田医科大学の中村政志先生たちは2016年以降に確認されたコチニールアレルギー16例を集計されたところ、うち2例は未成年の男性症例(うち1例は上記の平瀬先生報告例)であったということでした。そのため、コチニールアレルギーの発症機序として、化粧品以外の感作経路も検討する必要があるとの注意喚起を行っておられました。

これまで私も数例のコチニールアレルギーの患者さんを経験したものの全員が成人女性でしたが、今後は成人女性以外でもコチニールアレルギーは起こりうるという事を心の片隅に留めておかないといけないですね。

2023年1月9日(月)

妊婦さんにおける食物依存性運動誘発アナフィラキシー

2023年1月9日(月曜日)

昨年12月になりますが、名古屋で開催された日本皮膚免疫アレルギー学会総会に参加してきました。今月からは、その際に学んだ症例などについて述べさせて頂きます。

そもそも、食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、基本的には食物アレルギーでありながら原因となる食物の摂取のみでは症状は発現せず、その直後に運動負荷が加わった場合に限ってアレルギー症状をきたすという疾患です。但し、運動以外にも、原因食物摂取と同時に鎮痛剤を服用するなど、食物アレルギーの閾値を高める因子が共存すると症状は起こりうると考えられています。

今回、琉球大学の伊藤先生たちのグループは、小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーの既往がある20歳代女性が、妊娠36週時に小麦を摂取しただけでアナフィラキシー症状をきたした症例を報告すると共に、安静時での症状が誘発された原因として、「妊娠による子宮への血流増加によって消化管の血流不足が生じた結果、運動負荷や鎮痛剤内服時と同様に未消化蛋白が消化管から吸収されやすい状態に至った」との機序を推測されていました。

という事で、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの既往がある妊婦さんの場合には、妊娠中にはアレルギーの原因となる食物の摂取を、普段からより厳格に控えておく必要がありそうですね。

2022年12月6日(火)

スパイスアレルギー再考

2022年12月6日(火曜日)

今月もまた、10月に開催された日本アレルギー学会学術大会で学んできたお話です。藤田医科大学アレルギー疾患対策医療学教室の佐藤先生はスパイスアレルギーの7例を報告しておられましたが、その内訳はセリ科スパイスアレルギーが4例、フェヌグリークなどのマメ科スパイスアレルギーが2例、ブラックペッパーなどのコショウ科スパイスアレルギーが1例との事でした。これまで私はスパイスアレルギーというとほぼ全てがセリ科スパイスアレルギーだろうと考えていましたので、現実的にはマメ科やコショウ科といったセリ科以外のスパイスによっても少なからずアレルギーが発症している事は驚きでした。

また、皮膚プリックテストは診断に有用であるものの、タンパク質含有量が少ないスパイスでは偽陰性反応を呈する場合があるため、注意を要するとのことでした。セリ科スパイスアレルギーとは主にヨモギ花粉との交差反応により、アニス・フェンネル・クミン・コリアンダーなどのスパイス類で広範に反応を呈する事を特徴としますが、検査には各科の代表のスパイスのみで施行して構わないと考えられており、セリ科スパイスの代表としては通常はコリアンダーを用いるそうです。今回このような多彩なスパイスアレルギーが存在している事を学び、私自身もこれまでセリ科以外のスパイスアレルギーを見落としていた可能性がありますが、今後はセリ科以外のスパイスにも注目して食物アレルギーの診断を行なっていきたいと考えたような次第です。

2022年11月6日(日)

ネギ属に対するアレルギー

2022年11月5日(日曜日)

今回も、去る10月に東京で開催された日本アレルギー学会総会に参加して学んだ情報を紹介します。

大阪府済生会中津病院小児科・免疫アレルギーセンターの金先生達のグループは、ネギ属によるアナフィラキシーをきたした3症例を報告されましたが、ネギ属とは具体的にはタマネギ、ニンニク、青ネギ、白ネギ、ニラの5種類の食材を指すそうです。私自身ニンニクによるアレルギーの話は聞いたことがありましたが、その他の食材によるアレルギーの既報告は聞いたことすらありませんでしたし、実際日本ではネギ属アレルギーに関する報告が少ないため、見逃されている可能性が高いとのことでした。

これらの5種類の食材間には交差反応性が存在しており、3症例中最も重篤な症状をきたした1例では、この5種類の食材全てに対してアレルギー症状を発現したとのことでした。原因となるアレルゲンに関してはallinase、lectinなどが候補として挙げられていますが、未だ不確定だそうです。

という次第で、今後はネギ属に対するアレルギーに対しても留意しておく必要がありそうです。

 

2022年10月12日(水)

小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの新規アレルゲンalpha/beta gliadin MM1

2022年10月12日(水曜日)

去る、10月9日(日)に東京国際フォーラムで開催された日本アレルギー学会学術大会に出席してきました。興味深い話題がいくつもありましたが、今回は藤田医科大学アレルギー疾患対策医療学の青木先生が発表された小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの新規アレルゲンalpha/beta gliadin MM1についてお話します。

小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(以下WDEIA)とは、特に成人において稀ならず発症しうる疾患であり、小麦アレルギーであるにも関わらず小麦製品を食べるだけでは症状は起こらず、直後に運動をしたり鎮痛剤を服用したりする事で突然重篤なアナフィラキシー症状を発現する事を特徴とします。これまでには、WDEIAの主要アレルゲンは小麦のグルテン中のグリアジンの1種であるω-5グリアジンが主要抗原であるとされていました。但し、ω-5グリアジンが原因抗原として関与するのはWDEIAの8割程度であり、残りの2割は高分子量グルテニンが原因アレルゲンであろうとされていましたが、詳細は不明でした。しかし、この度青木先生達のグループはalpha/beta gliadin MM1がWDEIAの発症に大きく関わっていることを発見し、報告されました。彼らのデータによると、alpha/beta gliadin MM1はω-5グリアジン陽性WDEIAの88%、ω-5グリアジン陰性WDEIAの100%で陽性であり、反面高分子量グルテニンは10%程度の反応性しか示さなかったそうです。従って、WDEIAの大部分の症例ではω-5グリアジンとalpha/beta gliadin MM1との共感作であり、かつω-5グリアジン陰性WDEIAの主要抗原はalpha/beta gliadin MM1であると考えられます。

今後、もしalpha/beta gliadin MM1特異的IgEの測定が可能になればWDEIAの診断がより容易になりますので、そうなることを切に願っています。

 

2022年9月21日(水)

木の実アレルギーについて

2022年9月21日(水曜日)

サーモフィッシャーダイアグノスティック社から送られてくる「アレルギーに関するメールニュース」の今月のテーマが木の実アレルギーでしたので、私も便乗して今回はこの話題についてお話ししたいと思います。

ナッツアレルギーに関する海外論文を読むと、よくpeanuts &tree  nuts allergyと記載されています。何故この様な表現をするのかと言うと、ピーナッツが土の中に存在しているのに対して、アーモンド・カシューナッツ・クルミ・ピスタチオ・ヘーゼルナッツなどといったその他の木の実(tree  nuts)類は全て木に植わっていますので、あえてこの様に両者を区分する訳です。ピーナッツアレルギーや木の実アレルギーの患者さんは少なからずおられますが、その中にはピーナッツ単独や特定の木の実単独のアレルギーの場合もありますし、反面ピーナッツおよび多種の木の実間で広い交差反応性を有している場合もあり、様々なパターンが存在しています。とりわけ、カシューナッツとピスタチオ、クルミとペカンの間には強い交差反応性が存在していると考えられています。

ピーナッツアレルギーと木の実アレルギーの交差反応性に関するSichererらの論文によると、ピーナッツアレルギーの患者さんの33%に何らかの木の実アレルギーを認め、そのうちの63%が1種類、22%が2種類、15%が3種類以上の木の実アレルギーを有していたとの結果が得られたとのことです。この様に、多様なパターンが存在する木の実アレルギーの特に交差反応性を担う原因アレルゲンに関する検討は過去には多くはなされていませんが、今後の検討課題として大変興味深く思われます。

2022年8月17日(水)

“アトピー性皮膚炎と汗” 再考

2022年8月17日(水曜日)

アトピー性皮膚炎患者さんにとって、汗は有害なものであるとの考え方が一般的にまかり通っています。その根拠としては、1)アトピー性皮膚炎の患者さんでは汗が出にくいという症状(発汗障害)を有している人が多いのですが、このために皮膚のバリア機能低下やこもり熱をきたして痒みを増強させる、2)発汗減少の程度が軽微でまずまず汗をかいている患者さんでは、汗と皮膚表面の常在真菌であるマラセチアとが一体化してアレルゲンとして作用し症状の悪化を招く、などの考え方が存在しています。

少し古い話になりますが、去る7月14日にアトピー性皮膚炎と汗アレルギーに関する日本の権威であられる長崎大学皮膚科の室田教授を西宮市皮膚科医会講演会にお招きして、ご講演を拝聴しました。その結果、室田先生の御見解では汗は決して悪者ではなく、汗の中のシステインプロテアーゼにはアレルゲンを失活する作用があり、また汗中の乳酸ナトリウムや尿素は天然保湿因子として皮膚の潤いの維持に貢献するとの作用も有しているとの事でした。

結局、アトピー性皮膚炎患者さんにおける汗の功罪に関しては未だに解明されていない部分も多々あるのですが、この様な見解を含めて、私個人的にはアトピー性皮膚炎の患者さん方に対して、汗は積極的にかく様にして、且つかいた汗は濡れタオルで拭いたりシャワーを頻繁に浴びたりして、こまめに拭き取る様に努めて下さいと説明しています。

   

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