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2022年9月

2022年9月21日(水)

木の実アレルギーについて

2022年9月21日(水曜日)

サーモフィッシャーダイアグノスティック社から送られてくる「アレルギーに関するメールニュース」の今月のテーマが木の実アレルギーでしたので、私も便乗して今回はこの話題についてお話ししたいと思います。

ナッツアレルギーに関する海外論文を読むと、よくpeanuts &tree  nuts allergyと記載されています。何故この様な表現をするのかと言うと、ピーナッツが土の中に存在しているのに対して、アーモンド・カシューナッツ・クルミ・ピスタチオ・ヘーゼルナッツなどといったその他の木の実(tree  nuts)類は全て木に植わっていますので、あえてこの様に両者を区分する訳です。ピーナッツアレルギーや木の実アレルギーの患者さんは少なからずおられますが、その中にはピーナッツ単独や特定の木の実単独のアレルギーの場合もありますし、反面ピーナッツおよび多種の木の実間で広い交差反応性を有している場合もあり、様々なパターンが存在しています。とりわけ、カシューナッツとピスタチオ、クルミとペカンの間には強い交差反応性が存在していると考えられています。

ピーナッツアレルギーと木の実アレルギーの交差反応性に関するSichererらの論文によると、ピーナッツアレルギーの患者さんの33%に何らかの木の実アレルギーを認め、そのうちの63%が1種類、22%が2種類、15%が3種類以上の木の実アレルギーを有していたとの結果が得られたとのことです。この様に、多様なパターンが存在する木の実アレルギーの特に交差反応性を担う原因アレルゲンに関する検討は過去には多くはなされていませんが、今後の検討課題として大変興味深く思われます。

2022年8月17日(水)

“アトピー性皮膚炎と汗” 再考

2022年8月17日(水曜日)

アトピー性皮膚炎患者さんにとって、汗は有害なものであるとの考え方が一般的にまかり通っています。その根拠としては、1)アトピー性皮膚炎の患者さんでは汗が出にくいという症状(発汗障害)を有している人が多いのですが、このために皮膚のバリア機能低下やこもり熱をきたして痒みを増強させる、2)発汗減少の程度が軽微でまずまず汗をかいている患者さんでは、汗と皮膚表面の常在真菌であるマラセチアとが一体化してアレルゲンとして作用し症状の悪化を招く、などの考え方が存在しています。

少し古い話になりますが、去る7月14日にアトピー性皮膚炎と汗アレルギーに関する日本の権威であられる長崎大学皮膚科の室田教授を西宮市皮膚科医会講演会にお招きして、ご講演を拝聴しました。その結果、室田先生の御見解では汗は決して悪者ではなく、汗の中のシステインプロテアーゼにはアレルゲンを失活する作用があり、また汗中の乳酸ナトリウムや尿素は天然保湿因子として皮膚の潤いの維持に貢献するとの作用も有しているとの事でした。

結局、アトピー性皮膚炎患者さんにおける汗の功罪に関しては未だに解明されていない部分も多々あるのですが、この様な見解を含めて、私個人的にはアトピー性皮膚炎の患者さん方に対して、汗は積極的にかく様にして、且つかいた汗は濡れタオルで拭いたりシャワーを頻繁に浴びたりして、こまめに拭き取る様に努めて下さいと説明しています。

2022年7月7日(木)

Lipid Transfer Protein Syndromeとは?

2022年7月7日(木曜日)

Lipid Transfer Protein(以下LTP)とはヨーロッパ特に地中海領域では最もメジャーな果物類に対するアレルゲンであり、モモ、ブドウ、リンゴ、サクランボなどの主要抗原であると考えられています。そして、複数の果物類のLTPに感作されて症状を発現する場合に対して、LTP Syndromeとの病名が用いられています。LTP Syndromeの発症に対しては、モモのPru p 3というLTPアレルゲンコンポーネントが感作抗原として作用するという考え方と、ヨモギLTPのArt v 3などの花粉類に対する感作が先行して生じ、交差反応によって果物類のLTPに対しても症状をきたすようになるとの考え方の両者が存在しており、未だに結論には至っていません。

反面、日本人におけるLTPアレルギーの発症は極めて稀であると認識されています。その理由としては、果物類のLTPは大部分が果皮に存在し果肉にはほとんど存在していないのですが、西洋諸国では皮を剥かずに果物類を食べるためLTPの感作が生じやすいのに対して、日本人では通常果物類の皮を剥いて果肉だけを食するため、LTPの感作は滅多に生じないとの食文化の違いに起因した理由が推測されています。しかし、今後本邦でも食生活の変化などに伴ってLTPによるアレルギーが増加する可能性もあるため、本症に対して留意しておく必要があると思われます。

2022年6月13日(月)

痒みを増強する新規タンパク質NPTX2

6月13日(月曜日)

アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎の患者さん達は、強い痒みに悩まされている場合がほとんどです。現在痒みを抑制する主たる薬剤は抗ヒスタミン薬ですが、ヒスタミンが病態に強くは関わっていない場合もあり、そのため抗ヒスタミン薬がほとんど効かないとの患者さんも少なからず存在しています。最近では、末梢神経や表皮角化細胞などに発現しているIL-31というサイトカインが痒みに強く関与していることが判明し、近日中に抗IL-31抗体であるネモリズマブという薬剤が発売されることになり、抗ヒスタミン薬が効かない痒みに対する有効性が期待されています。

さらに、本年5月に九州大学、岡山大学、米国ジョンズ・ホプキンス大学などの研究グループは、痒い皮膚を繰り返して掻きむしることによって皮膚と脊髄とを結ぶ感覚神経中でNPTX2(neuronal pentraxin 2)という蛋白質が増加し、この蛋白質がさらなる痒みを誘発することによって、いわゆる「痒みと掻破の悪循環(itchy-scratch cycle)」が引き起こされることを見出されました。まだまだ追加研究が必要でしょうが、今後この新規蛋白質を抑制するような薬剤が開発されて、痒みで悩む患者さん方の症状を緩和する選択肢が増えることを期待したいと思います。

2022年5月16日(月)

ユズアレルギー

2022年5月16日(月曜日)

一昨日の土曜日、診療終了後に三ノ宮で開催された兵庫県臨床アレルギー研究会に出席してきました。大変興味深い発表の多い意義深い研究会でしたが、兵庫医大免疫内科の田村誠朗先生が発表されたユズアレルギー症例がとりわけ印象深かったため、ここに紹介させて頂きます。

患者さんは、過去にコンビニのお弁当を摂取後に2回アナフィラキシーショックを繰り返したとの経過でしたが、お弁当中の共通の食材としてユズドレッシングが含まれていたとのことでした。私の興味を惹いた最初のポイントとして、ユズ現物を食べたのではないのに、共通の食材として存在していたユズドレッシングから良くユズアレルギーに辿り着いたなあと感服してしまいました。また、ユズアレルギーの報告は過去には1〜2例しか存在していない稀なアレルギーなのですが、今回原因抗原の検索を行われたところ、immunoblottingで25kDaの分子量の抗原が疑わしいと考えられたとのことでした。そして、この抗原はオレンジのアレルゲンコンポーネントの1つであるCit s 1と交差反応性があると考えられましたが、ここで私の興味を惹いた2番目のポイントとして、Cit s 1とはGermin-like proteinというかなりマイナーなアレルゲンですので、この様なマイナーなアレルゲンが主要抗原として作用しているという可能性に対してもかなり驚いてしまいました。

但し、今後この様にこれまではマイナーだと考えられていたアレルゲンが重要な役割を果たしている新規アレルギーが見つかる可能性も否定出来ないため、食物アレルギーからはまだまだ目を離す事が出来ませんね。

2022年4月12日(火)

重症の魚アレルギーではコラーゲン特異的IgE陽性例が多い

2022年4月12日(火曜日)

魚アレルギーに関してはこれまでにも何度か述べてきました。2021年2月の本コラムでは魚アレルギーの新規アレルゲンとして高分子量のmyosin heavy chainに注目が集まっている事を紹介しましたが、依然として魚アレルギーの2大アレルゲンはパルブアルブミンとコラーゲンであると考えられています。このうちパルブアルブミンは欧米では魚アレルギー患者の95%を占めるのに対して、日本人の魚アレルギー患者では60〜70%程度で陽性とされています。一方コラーゲンに関しては、日本人の魚アレルギー患者の約50%で陽性であり、コラーゲンは日本人の魚アレルギー患者で有意に陽性をきたしやすいと考えられてきました。

それに加えて、昨年11月に開催された日本皮膚免疫アレルギー学会で藤田医科大学総合アレルギー科の下條先生は、重症の魚アレルギー症例11例を集計して原因アレルゲンに関する検討を行ったところコラーゲン陽性が8例、パルブアルブミン陽性が5例との結果が得られた事より、魚コラーゲン特異的IgEが重症魚アレルギーを検出マーカーになりうる可能性について報告されました。現在、パルブアルブミンおよびコラーゲンの特異的IgEはコマーシャルベースでは測定できないのですが、今後これらの項目が一般のクリニックレベルでも測定できるようになる様に願っています。

 

 

2022年3月8日(火)

デュピルマブとJAK阻害薬とをどの様に使い分けるべきか?

2022年3月8日(火曜日)

ここ数年間でアトピー性皮膚炎に対する多くの新規治療薬が既発売ないし開発中であり、現在使用可能な薬剤を挙げると注射薬であるデュピルマブ(商品名:デュピクセント)と3種類のJAK阻害薬の内服薬(商品名:オルミエント、リンヴォック、サイバインコ)が存在しています(外用剤を除く)。いずれの薬剤も薬価が高額であるという点が最大のネックなのですが、従来の標準的な治療ではコントロールが難しかった重症アトピー性皮膚炎の患者さんに対してもいずれも高い有効性を示しています。これらのうちで、デュピルマブは主にIL-4とIL-13というアトピー性皮膚炎に深く関わっている2種類のサイトカインを選択的に阻害する薬剤であるため、比較的副作用は少ないと考えられています。一方、JAK阻害薬はより多くのサイトカインを阻害するため有効性は高いと考えられていますが、反面結核、ウイルス性肝炎、腎機能障害などの発症の危険性が存在しています。

但し、これらの薬剤を導入しようと考えた際に、どの様な症例に対してどの薬剤を第一選択薬として使用するべきか判らないという点が多くの皮膚科医を悩ましている問題点であると考えられます。この点に関して、最近日本のアトピー性皮膚炎の権威とも称するべき2人の先生方のご講演を拝聴し、この点に関するご意見を賜りました。その結果、A先生は通常はデュピルマブを優先するが、1)注射嫌いの方、2)顔面の紅斑が特に目立つ方、にはJAK阻害薬を先に使用すると、一方B先生はJAK阻害薬には全く無効な症例も存在するため、まずはデュピルマブを試して、有効性が乏しい場合にはJAK阻害薬に変更するとの方針をご教授下さいました。

この点に関してはまだまだ試行錯誤な点も多いのですが、お2人の先生の指針に従い、今後私もこれらの薬剤の処方を考慮していきたいと考えています。

 

2022年2月9日(水)

α-Gal以外の抗原による獣肉アレルギー

2022年2月9日(水曜日)

今回もまた、昨年11月に開催された日本皮膚免疫アレルギー学会から学んだ症例から紹介することにします。

獣肉(牛肉をはじめとするいわゆる四つ足動物)アレルギーについては本コラムでも2012年12月や2013年11月に紹介してきましたが、獣肉アレルギーとはα-Galという物質を原因抗原としてマダニに刺されることによって感作が生じ、カレイの魚卵や抗がん剤のセツキシマブといった一見全く脈絡のない因子との間で交差反応性を有するといったことを特徴とする疾患です。

ところが本学会で、兵庫県立加古川医療センターの原田朋佳先生(私と同じ苗字だなあ 笑)は、α-Gal以外の抗原による獣肉アレルギー症例を報告しておられました。その報告によると、原因抗原はコラーゲンであり肉のコラーゲンと魚のコラーゲン間には交差反応性は存在しないものの、大変興味深い事に肉を食べた際にも魚を食べた際にも生では症状は生じず、加熱した場合にのみ症状が発現するとの事でした。

一般的には加熱すると抗原性が減弱するアレルゲンが多い中で、このような現象は大変珍しい事ですが、その理由としては食物中のコラーゲンは生の状態であれば水に不溶性であるのに対して、加熱する事で水に溶けやすくなって抗原性を発揮するそうです。

本当に色々なタイプのアレルギーが存在しており、ますますアレルギーに対する興味は尽きませんね。

2022年1月9日(日)

アドレナリン蕁麻疹とは?

2022年1月9日(日曜日)

今回は、昨年11月に開催された日本皮膚免疫アレルギー学会で学んできたお話を紹介します。

学会のシンポジウムで、神戸大学皮膚科の福永 淳先生がアドレナリン蕁麻疹との聞き慣れない疾患について解説して下さいました。アドレナリン蕁麻疹とは、ストレス時や緊張した際に暖まると生じやすい物理性蕁麻疹の一種ですが、過去の報告例は10数例程度ときわめて稀な疾患だそうです。ノルアドレナリンやアドレナリン値は上昇するものの、ヒスタミンやセロトニン値は正常であるため抗ヒスタミン薬は無効であり、治療にはβ遮断薬であるプロプラノロールが有効とのことでした。

臨床像としては、周囲に白暈を伴った点状紅斑の形態をとる事が特徴的との事でしたが、この写真を見て、ずっと以前に私が“樋口点状紅斑型アスピリン蕁麻疹”として報告した症例と臨床像が瓜二つであることを思い出しました。いずれも稀な疾患であるだけに症例の集積は困難であろうと予想されますが、果たして、アドレナリン蕁麻疹と樋口点状紅斑型アスピリン蕁麻疹との間に何らかの因果関係が存在しているのか否か、大変興味深く思いました。

2021年12月1日(水)

クラゲアレルギー、納豆アレルギーに関する最新見解

2021年12月1日(水曜日)

今回もまた、本年10月に開催された日本アレルギー学会の発表から学んだお話です。

納豆アレルギーに関しては、2014年10月の本コラムでサーファーなどのマリンスポーツ愛好者に多い事を紹介しました。その理由として、ポリガンマグルタミン酸(PGA)と言う物質が納豆アレルギーの原因抗原なのですが、クラゲに刺された際にPGAが体内に侵入してアレルギーの感作を誘導するため、クラゲに刺される機会の多いマリーンスポーツ愛好者に多いと考えられてきました。

しかし今回、クラゲ刺傷歴がないにも関わらず食用クラゲ摂取後に症状を発現したアレルギー症例やマリンスポーツ歴のない納豆アレルギー症例の報告がなされ、クラゲアレルギーと納豆アレルギーとの間に因果関係のない、PGAとは異なった抗原が存在している可能性も疑われる様になってきました。日本アレルギー学会では、岡山大学小児科の津下先生達はクラゲ刺傷歴や納豆アレルギーの既往がなく食用クラゲ摂取後にアレルギー症状をきたした14歳女性症例を報告すると共に、食用クラゲによるアレルギーの既報告8例中5例ではクラゲ刺傷歴があったものの、残りの3例はクラゲ刺傷歴のない小児例であったと論じておられました。また、藤田医科大学の鈴木先生達はマリーンスポーツ歴がなく、PGAのプリックテストが陰性であった納豆アレルギー症例を報告すると共に、PGA陰性の納豆アレルギー患者においてはナットウキナーゼがアレルゲンになりうる可能性を紹介しておられました。

インドア派の私の場合、納豆アレルギーは大丈夫だわとタカをくくっていましたが、どうやらそうでもなさそうですね。

   

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