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2025年3月

2025年3月12日(水)

カシューナッツアレルギーと新規アレルゲンであるシトリンとの関連性

2025年3月12日(水曜日)

カシューナッツアレルギーの場合、同じくナッツ類であるピスタチオおよび増粘多糖類のペクチンとの間に強い交差反応性が存在しているということは2023年8月の本コラムで既に述べました。

さらに、近年カシューナッツと柑橘類の種子との間に交差反応性が存在しているとの報告があり、2023年にKonstantinouらはこの交差反応性を担う原因抗原として、柑橘類の種子の中に含まれるシトリンという新規アレルゲンを同定しました。シトリンはカシューナッツのAna o 2と同じく11Sグロブリンに属しており、カシューナッツと高い相同性を有していると考えられています。その上、製品化された柑橘類由来のペクチンには製造過程で柑橘類の種子が混入するためペクチン中にもシトリンが含まれており、ペクチンアレルギーの真の原因抗原はシトリンであるとの仮説も提唱されています。

自治医科大学附属さいたま医療センター小児科の板橋先生らは、カシューナッツと柑橘類種子とのアレルギーが疑われた症例を報告しておられ(アレルギー、73;1163-1167、2024)、新規アレルゲンであるシトリンの重要性も増加してくると思われます。今後のさらなる症例集積と抗原解析に注目していきたいと考えています。

2025年2月11日(火)

小児アトピー性皮膚炎の重症度マーカーSCCA2について

2025年2月11日(火曜日)

SCCA2とは15歳以下の小児におけるアトピー性皮膚炎の重傷度評価を目的としたマーカーであり、2021年9月に保険収載されましたが、主に成人のアトピー性皮膚炎の患者さんを扱う皮膚科医には余り知られていない検査項目ですので、ここに紹介してみます。

SCCA2は、serpinスーパーファミリーに属するセリンプロテアーゼインヒビターであり、主に上皮細胞から産生される蛋白質です。アトピー性皮膚炎の発症に強く関与するIL-4、IL-13といったTh2系サイトカインによって気道上皮細胞を刺激した際に発現が上昇することが知られており、アトピー性皮膚炎の重症度と強く相関しているため、小児アトピー性皮膚炎の重症度の指標として有用なマーカーであると考えられています。

我々皮膚科医が頻用しているTARCと比較すると、TARCは年齢によって3種類のカットオフ値が設定されているのに対して、SCCA2では年齢とは無関係に(但し、15歳以下という制限はありますが)カットオフ値は1.6ng/mlの1種類のみであり、小児に限ってはSCCA2はTARCよりも精度が高いと評価されています。

但し、TARCとSCCA2との同時測定は、保険上認められていませんのでご注意下さい。

2025年1月15日(水)

ビールアレルギー Part2

2025年1月15日(水曜日)

去る2024年12月20日(金)〜21日( 土)にはクリニックを休診にさせて頂き、福島県郡山市で開催された日本皮膚免疫アレルギー学会に出席してきました。今回もまた多くの新知見を学びましたが、今回は藤田医科大学先端アレルギー免疫共同研究講座〜ホーユー株式会社の川邊智史先生が発表されたビールアレルギーについて紹介したいと思います。

ビールアレルギーに関しては、2021年11月の本コラムで述べており、その際には過去のビールアレルギーの報告はホップ・ビール酵母・大麦などに起因する場合が多いのに対して、ここで紹介した症例は全て麦芽を原因とするものであったと記載しています。今回、川邊先生は8例のビールアレルギー症例を集計しておられましたが、今回もやはり全て麦芽を原因とするものでした。原因アレルゲンに関しては、既報告ではLipid Transfer ProteinやSerpinが主体であるとの事でしたが、今回の8症例中にはbeta-glucosidaseやcupincinなど過去に報告のない新規アレルゲンの関与が多く認められ、ビールアレルギーには多種類のアレルゲンが発症に関与していると考えられました。

また、今回の症例でも8例中7例で発症前にビールを取り扱う飲食業に従事していたとの事であり、ビールアレルギーにおける経皮感作の重要性が改めて確認されました。さらに、7例中6例では20歳以前から飲食業に従事していたとの事であり、飲酒可能な年齢前から既にビールアレルギーの感作が生じていたとの可能性が疑われました。

ビールアレルギーを獲得してしまうと人生が楽しくなくなってしまいますので、アトピー性皮膚炎や手湿疹のある方では特に、職業性にビールを扱う際には素手では触らないようにするなどの留意が必要だと思われます。

2024年12月5日(木)

難治性慢性じんましんの新規治療薬;ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤

2024年12月5日(木曜日)

従来の抗ヒスタミン薬を始めとする内服薬では治療効果が乏しい難治性慢性じんましんの患者さん方に対しては、現在オマリズマブやデュピルマブといった注射薬の使用が可能となっていますが、それでもなお膨疹の完全抑制には至らない場合も存在しています。そのような患者さん方に対してブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤という新規薬剤の高い治療効果が期待されています。

ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK:Bruton tyrosine kinase)とはFcεRIおよびB細胞受容体のシグナル伝達の下流に位置する酵素であり、その阻害薬であるBTK阻害剤は自己抗体の産生を抑制し,さらにマスト細胞や好塩基球における高親和性IgE受容体FcεRIのシグナルを抑制する作用を有しています。このような機序に基づいて、難治性慢性じんましんの痒みや膨疹形成に対する強い阻害作用が存在していると考えられています。

現在、remibrutinib、rilzabrutinib、fenebrutinib、tirabrutinibなど数種類の経口BTK阻害剤の治験が進んでいるようですが、これらの薬剤を使用可能になる事で、従来の治療では完全抑制出来ない重症慢性じんましんの患者さん達の症状が緩和する事を切に望みたいと思います。発売までにはまだ数年を要する様ですが、我々皮膚科医にとっても本当に楽しみですね。

2024年11月7日(木)

ハモ由来コラーゲン含有化粧品に感作され、アナフィラキシーショックを生じたハモアレルギー

2024年11月7日(木)

去る10月に開催された日本皮膚科学会中部支部学術大会で、関西医大の田中翔先生はハモ由来コラーゲン含有化粧品に感作され、アナフィラキシーショックを生じたハモアレルギー症例を報告しておられました。

これまで魚アレルギーに関しては本コラムでも何度か述べてきましたし、魚アレルギーでは経皮感作が生じやすい事が良く知られています。しかし、多くの場合は魚類を扱う料理人や寿司職人の方の手指を介した経皮感作の報告であり、この症例の様に魚類を含んだ化粧品の塗布による感作例は余り聞いた事がありませんでしたし、魚類由来のコラーゲンを含んだ化粧品が存在しているという事にも驚いてしまいました。

また、魚類アレルギーはパルブアルブミンかコラーゲンを主たるアレルゲンとしていますが、これらのアレルゲンは程度の差はあれ全ての魚類に存在していますので、魚類アレルギーは一般的に多種の魚類に対して症状を発現します。しかし、この症例ではハモ、鰻、鮭、アナゴ、タラ、甘エビのプリックテストが陽性であったもののハモ以外の魚類の摂取では症状はきたしていませんでした。従って、魚類のコラーゲンでは魚の種類によってアレルギー能が異なる場合もあると考えられ、非常に示唆に富む報告だなあと感服したような次第でした。

2024年10月20日(日)

アトピー性皮膚炎の痒み軽減にプレガバリンが有効?

2024年10月20日(日曜日)

もう先月の話になりますが、元東京慈恵会医科大学皮膚科教授で現在はあたご皮膚科院長の中川秀己先生が神戸まで講演に来られたため、拝聴に伺いました。その際に、中川先生から“アトピー性皮膚炎の痒みの緩和にプレガバリンが有効だよ”という話を教えて頂きましたので、文献を探してみました。

プレガバリン(商品名リリカ®)は、本来は中枢神経系に直接作用して痛みを緩和する末梢神経障害性疼痛の治療薬ですが、プレガバリンが皮膚そう痒症や透析患者さんの痒みを緩和するという報告や、プレガバリンと同じくガバベンチノイドに属するミロガバリン(商品名タリージェ®)という薬剤がアトピー性皮膚炎モデルマウスにおいて痒みの緩和に有効だったとの報告が認められました。その作用機序については、痒みの伝達を担う神経は疼痛を伝達する神経と同様のC繊維であり、ガバベンチノイド系の薬剤はC繊維の活性化を阻害する作用を有しているためとの事でした。

本来はアトピー性皮膚炎に対しては適応外の薬剤ですので、おいそれと使用する訳にはいきませんが、今後有効性に関するエビデンスが確立して、使用が可能になれば喜ばしいなあと考えています。

 

2024年9月9日(月)

ミルクプロテイン飲料によるアレルギー

2024年9月9日(月)

近年、運動後の摂取によって筋肉合成が促進されるなどといった効果が実証され、ミルクプロテイン飲料が人気を博しているそうです。しかし、竹村らは小児用ミルクプロテイン製剤摂取後にアナフィラキシーを発症した9歳男児症例を報告しており(小児科.  2017;58:715-718)、時にはミルクプロテイン飲料の摂取によってもアレルギー症状をきたす場合はあるようです。但し、ここで特記すべき事はこの症例では通常量の牛乳の摂取は可能であったという点なのですが、その理由として牛乳中の乳蛋白量は22mg/ml、プロテイン製剤中の乳蛋白量は133mg/mlであり、プロテイン製剤1食中には牛乳1200ml分に相当する多量の乳蛋白が含まれていたとのことでした。

今回、私たちもこの症例と全く同様の経過の患者さんを経験しましたが、やはりミルクプロテイン飲料中には牛乳の約3倍量の乳蛋白が含有されている事を確認しました。従って、牛乳の摂取は可能である程度の弱い感作が生じているミルクアレルギーの患者さんにおいて、ミルクプロテイン飲料の摂取によってアレルギー症状を発現する危険性が存在しており、注意が必要であると思われます。

2024年8月6日(火)

蕁麻疹と抗TPO抗体

2024年8月6日(火曜日)

抗TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)は甲状腺細胞の崩壊に伴う腫大(甲状腺腫)がみられる場合に最初に測定すべき抗体であり、バセドウ病の90%、橋本病のほぼ100%で抗TPO抗体は高値を示すとされています。また、以前から慢性蕁麻疹と橋本病との関連性は論じられており、杉山先生らによる集計では、検討した慢性蕁麻疹患者さん63名中17名(27%)で抗TPO抗体、抗Tg抗体(抗甲状腺サイログロブリン抗体)のいずれかまたは両者が陽性であり橋本病と診断されたものの、うち14例は甲状腺ホルモン値自体は正常であり、自己抗体のみが陽性の橋本病であったそうです(杉山晃子ほか:皮膚病診療. 2014;36:808-812.)。

という知識を踏まえた上で、7月末に大阪医科薬科大学皮膚科の福永 淳先生による蕁麻疹に関するご講演を拝聴しましたが、講演の中で福永先生は慢性蕁麻疹症例における抗TPO抗体測定の意義についてお話しされ、特に総IgEが低値でかつ抗TPO抗体陽性の慢性蕁麻疹患者さんの場合にはオマリズマブの効果が乏しい傾向があるとの画期的なデータについて発表しておられました。

私自身はこれまで慢性蕁麻疹患者さんに対して抗TPO抗体を測定することは行っていませんでしたが、今後抗TPO抗体や抗Tg抗体も測定することも望ましいかも知れませんね。

2024年7月7日(日)

齧歯類の小動物咬症後に生じるアナフィラキシーショック

2024年7月7日(日)

齧歯類とは、物を齧るのに適した上顎下顎に伸びる門歯を有した小動物を指し、ネズミ、モルモット、ハムスター、リスなどが齧歯類に属します。そして、齧歯類の小動物に咬まれた後に、時にアナフィラキシーショックなどのアレルギー症状が発現する場合があり、過去にはハムスターによる症例が数多く報告されています。この度私はプレーリードッグに咬まれた後にアナフィラキシーショックをきたした患者さんを経験したため、齧歯類の小動物咬症後に生じるアレルギー反応に関して少々勉強してみましたので、今回はその内容について説明してみます。

齧歯類の小動物咬症後に生じるアレルギー反応の原因アレルゲンは、主として分子量60〜70kDaのアルブミンと分子量約20kDaのリポカリンとの2種類に大別されます。このうち、アルブミンでは各動物間できわめて高い構造的類似性があるため広範な交差反応性を示すのに対して、リポカリンは種ごとに独立性の高い抗原性を示すアレルゲンと考えられています。そのため、リポカリンが原因アレルゲンであった場合には反応を生じた小動物以外の種にはそれほど留意しなくても構わないのですが、アルブミンが原因アレルゲンであると同定された場合には、特に齧歯類の他の小動物に咬まれた場合にも反応をきたす可能性があるため、他の小動物との接触も避けることが必要であると考えられます。

2024年6月11日(火)

眼瞼の症状から予測する食物アレルギー

2024年6月11日(火曜日)

去る6月6日〜9日に京都国際会館で日本皮膚科学会総会が開催され私も出席してきましたが、今回はその学会での講演の中から興味深い話題を紹介することにします。

昭和大学医学部皮膚科教授の猪又直子先生は「眼瞼の症状から予測する食物アレルギー」とのタイトルでご講演を行われましたが、眼瞼の浮腫を特徴とする食物アレルギーの代表は、かつて社会問題になった加水分解小麦含有石鹸の使用により生じる小麦アレルギー症例であるとの事でした。また、花粉感作が先行して発症する花粉〜食物アレルギー症候群においても、特に豆乳によるアナフィラキシーや2018年6月、2020年1月、2023年11月の本コラムでも紹介したGRP (Gibberellin-regulated protein)を原因アレルゲンとするモモや梅干しアレルギーの場合には眼瞼の浮腫の臨床像を呈しやすいそうです。さらに、赤みを帯びた食品摂取後に眼瞼浮腫を生じた症例と遭遇した場合には、コチニール色素によるアレルギーを疑う必要があるとの事でした。

これまで私には、この様に生じる臨床症状から原因となる食物アレルゲンを推測するという発想はありませんので、猪又教授のご講演は大変興味深く感じました。

   

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