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2010年12月

2010年12月1日(水)

TARCについて

2010年12月1日(水曜日) 先週の週末は休診にさせて頂き、東京国際フォーラムで開催された日本アレルギー学会総会に出席してきました。 その際に様々な新知見を学ぶことが出来ましたが、中でも私が最も深い感銘を得たのは、大阪府立呼吸器アレルギー医療センター皮膚科部長の片岡葉子先生によるTARCに関する御講演でした。 TARCとは白血球に対して走化性などを示すケモカインの一つであり、とりわけアトピー性皮膚炎の重症化に伴い鋭敏に上昇を示すことより、現在では“アトピー性皮膚炎の皮膚症状の重症度が数値でわかる血液検査”と評価されています。2008年7月に保険適応され、3割負担の方で自己負担額600円との価格設定がなされています。 これまで、アトピー性皮膚炎の治療に関して最も難しい問題点は、ステロイドを集中外用すると一旦改善傾向を認めるものの、“果たしてどのレベルでステロイド外用を減らしていくべきなのか? 中止するべきなのか?”という点に関する一定の指標がない事でした。その結果、十分に改善していない段階で早めにステロイド外用を中止することにより、また再燃してしまう患者さんが多いとの傾向が認められていました。 しかし、片岡先生の御講演によると、TARCの出現はこのような問題点の解消となりうるものであり、TARC値が正常値に復することをステロイド中止のめやすと判断して治療するときわめて良好な経過を示す場合が多いとの事でした。片岡先生は、患者さん達に対して“一見すると症状は良くなっているように見えますが、TARC値が高いうちはまだまだアトピー性皮膚炎の炎症細胞は数多く残っているので、ここで治療を中止するとまたぶり返してきますよ”との説明を行う事によって、患者さん達は納得されて治療を継続し、寛解状態を維持できると述べておられました。 私も今後はTARC値の動きを参考としつつ、よりレベルの高いアトピー性皮膚炎の治療を目指したいと痛感したような次第です。
   

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