2013年3月3日(日曜日)
昨日は診療終了後、神戸で開催された兵庫県皮膚科医会学術講演会に出席しました。内容は、杏林大学皮膚科臨床教授の狩野先生による「新しい薬剤による皮膚病変」と、岐阜大学皮膚科教授の清島先生による「ヒトパルボウイルスB19感染症を中心にした最近のウイルス発疹症」との2つの講演でした。どちらも学ぶところが多く感銘深い御講演だったのですが、狩野先生の御講演内容は、以前に本コラムでも御紹介した分子標的薬による薬疹の話が主体でしたので、今回は清島先生の御講演内容を少しかいつまんで紹介する事にしましょう。
ヒトパルボウイルスB19感染症とは、いわゆるリンゴ病の事です。リンゴ病とは小児に好発するウイルス感染症で、平手打ち紅斑と呼ばれる、リンゴのほっぺの様な真っ赤な頬の紅斑が生じることを特徴とし、その他腕や下肢には網の目様の紅斑が生ずる事も特徴的です。この様な皮疹を呈する子供のリンゴ病は、私達にとって診断が難しい病気ではありません。
一方問題となるのは、このヒトパルボウイルスB19が大人に感染した場合です。大人の約85%のヒトは抗体を獲得しており、大人にヒトパルボウイルスB19が感染する場合は比較的稀なのですが、感染した場合は手足の腫脹・下腿の浮腫・関節痛といった、子供のリンゴ病で生じる皮疹とは全く異なった病態が起こるそうです。しかもこのような病態は比較的長く続き、いわゆる"慢性疲労症候群"と呼ばれる病気の一部の患者さんでは、このヒトパルボウイルスB19感染が関与していると考えられているとの事でした。
さらに、現在の保険制度ではこのヒトパルボウイルスB19のグロブリン抗体価の測定は妊婦さんだけにしか認められていないという事も本症の診断をより困難にしているのです。特に大人のヒトパルボウイルスB19感染症の診断を正しく行うためにも、ヒトパルボウイルスB19のグロブリン抗体価の測定が誰にでも保険承認下で行えるようになる事を切に願いたいと思います。