2019年7月15日(月曜日)
このたび、黄砂・PM2.5について講義をして下さいとの申し出を頂きましたが、果たして黄砂およびPM2.5がどの様な働きをしているのか私自身もよく知らないとの状況でしたので、今回の依頼をきっかけに黄砂・PM2.5について勉強してみることにしました。
患者さん達はよく黄砂アレルギーがありますとかPM2.5アレルギーがありますとか言われますが、黄砂やPM2.5自体はアレルゲンとしては作用はしていないと認識されており、黄砂やPM2.5に関するアレルゲンの血液検査項目もありません。
PM2.5とは粒子径が2.5μm以下のものを指し、一方黄砂はこれよりは大きく粒子径4μm程度とのことですので、この様な微粒子では分子量が小さすぎて、恐らくアレルゲンとしては作用し得ないのだろうと考えられます。
ところが、黄砂やPM2.5の大気中の浮遊濃度が高くなると、それに伴って喘息・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎の発症頻度が高まるとの報告は多々認められましたので、やはり黄砂・PM2.5はアレルギー疾患の発症と何らかの関連性を有していると考えざるを得ません。
しかし、東京女子医大東医療センター眼科の三村達哉先生は、黄砂飛来時に来院したアレルギー性結膜炎の患者さん達に対して、1)黄砂自体、2)黄砂抽出液、3)加熱黄砂、4)二酸化珪素などの黄砂関連物質、を用いた皮膚テストを行ったところ、微生物や花粉などを含む黄砂そのもので最も皮膚反応が高く、花粉などを除去した黄砂抽出物では皮膚反応が低下し、加熱により微生物までもを取り除いた黄砂ではさらに反応が低下したとのデータを示されており、この事より黄砂自体は少なくともアレルゲンとしては作用していない事が確認されました。
結局、黄砂やPM2.5は、1)花粉類や金属類などによるアレルギー反応をアジュバント作用によって増強するとの機序、2)大気汚染物質内に含まれるディーゼル排気微粒子自体の毒性反応により粘膜刺激作用をきたすとの機序、といったアレルギー性および非アレルギー性の両者の反応に関わっているというのが実情であると思われます。