2009年10月16日(金曜日)
かねてから予告しておりましたが、一昨日に放送された読売テレビ「ザ世界仰天ニュース」で当院での診療風景が放映されました。御覧頂けなかった方のためにあらすじを説明いたしますと、
50歳代、女性。約25年前より秋季に花粉症があり、ブタクサ・ヨモギアレルギーと診断されています。約20年前よりカレーを食べる度に、全身性の蕁麻疹および咳き込んだり呼吸困難をきたすとの症状が出現するようになったため、約10年前からはカレーを食べるのを控えていました。しかし、どうしても大好きなカレーをもう1度食べたいとの願いが強く、当院を受診の上31種類のスパイスを用いて皮膚プリックテストを行ったところ、セリ科スパイスに対するアレルギーと診断されました。しかし一般的には、アニス・フェンネル・コリアンダー・クミンなどのセリ科のスパイスはカレーには必須であり、通常セリ科のスパイス抜きではカレーを作る事は不可能とされています。そこで、スパイスの達人が登場して工夫に工夫を重ねてセリ科のスパイス抜きのカレー粉を作り上げ、患者さんは約10年振りに大好きなカレーをアレルギー症状をきたす事なく、大感激で完食する事ができたのでした。
との内容でした。
しかし、このカレーは我々も試食させて頂いたのですが、とても美味しいと言えるものではありませんでした。ターメリックを使ってカレー色には仕上げているのですが、いわゆるカレー独特のコクと風味が全く感じられない味わいだったのです。結局、セリ科スパイス抜きではどうしてもカレーの味の深さを作り上げる事は出来ないのでしょう。
ただ、番組の名誉にために付け加えておきますと、このシーンは決してやらせ等ではなく、患者さんは実際に心底感動しながら美味しそうにカレーを食べておられ、私は少なからず驚いてしまったのでした。
その時に感じたことは、“人生における幸せ”とは何だろうという事です。このカレーによって、患者さんは恐らく我々がどんな美味しいカレーを食べた時よりも、より深い喜びを感じられた事でしょう。普段当たり前に出来ていた事が当たり前でなくなった時、その事が再度果たせた際に得られる喜び。それが如何に深いものであるのか、そんな事をひしひしと痛感した一日でした。