2022年3月8日(火曜日)
ここ数年間でアトピー性皮膚炎に対する多くの新規治療薬が既発売ないし開発中であり、現在使用可能な薬剤を挙げると注射薬であるデュピルマブ(商品名:デュピクセント)と3種類のJAK阻害薬の内服薬(商品名:オルミエント、リンヴォック、サイバインコ)が存在しています(外用剤を除く)。いずれの薬剤も薬価が高額であるという点が最大のネックなのですが、従来の標準的な治療ではコントロールが難しかった重症アトピー性皮膚炎の患者さんに対してもいずれも高い有効性を示しています。これらのうちで、デュピルマブは主にIL-4とIL-13というアトピー性皮膚炎に深く関わっている2種類のサイトカインを選択的に阻害する薬剤であるため、比較的副作用は少ないと考えられています。一方、JAK阻害薬はより多くのサイトカインを阻害するため有効性は高いと考えられていますが、反面結核、ウイルス性肝炎、腎機能障害などの発症の危険性が存在しています。
但し、これらの薬剤を導入しようと考えた際に、どの様な症例に対してどの薬剤を第一選択薬として使用するべきか判らないという点が多くの皮膚科医を悩ましている問題点であると考えられます。この点に関して、最近日本のアトピー性皮膚炎の権威とも称するべき2人の先生方のご講演を拝聴し、この点に関するご意見を賜りました。その結果、A先生は通常はデュピルマブを優先するが、1)注射嫌いの方、2)顔面の紅斑が特に目立つ方、にはJAK阻害薬を先に使用すると、一方B先生はJAK阻害薬には全く無効な症例も存在するため、まずはデュピルマブを試して、有効性が乏しい場合にはJAK阻害薬に変更するとの方針をご教授下さいました。
この点に関してはまだまだ試行錯誤な点も多いのですが、お2人の先生の指針に従い、今後私もこれらの薬剤の処方を考慮していきたいと考えています。